本研究は、東日本方言と西日本方言の混じりあう東濃(岐阜県美濃地方東部)西部の方言の位置づけを明確にする試みである。特に、当該方言の自然な発話におけるリズム、イントネーションといった音声的特徴を明らかにすることを目的として研究を開始したが、COVID-19の蔓延により、対面での発話を伴う方言調査が困難な時期があったことから、当初の計画を変更し、文法的な問題を射程に入れた研究をおこなうこととなった。 その結果、まず、COVID-19蔓延以前に得られた会話の音声資料を中心に、文の初めのリズムとイントネーションに見られる当該方言の特徴とその出現条件を明らかにできたことから、関西言語学会において口頭発表を行い、さらに3本の論文として結果を公表した。 次に、同じく会話の音声資料の動詞の分析をもとに、当該方言において特殊拍がアクセント核をもちうる条件を明らかにし、1本の論文を著した。 助成期間後半にはオンラインアンケートを用いた文法研究の一つとして、接続助詞「ニ」が原因・理由を表す順接用法が一定の条件で許容される状況を明らかにした。さらに最終年度において、終助詞「ヨ」が特定のイントネーションを伴う場合に限って「勧め」の意味で理解されることを明らかにし、計3本の論文と1件の講演、協力者へのパンフレット配布において発表した。 これらの研究活動と並行して、市民に研究成果を還元するため、方言カルタの発行と当該方言に関するホームページの運営をおこなった。
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