研究課題/領域番号 |
19K00613
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
平山 真奈美 成蹊大学, 文学部, 准教授 (90580027)
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研究分担者 |
ホワン ヒョンギョン 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (80704858)
加藤 孝臣 上智大学, 言語科学研究科, 准教授 (20548151)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ダウンステップ / 日本語 / 品詞 / 統語 / 知覚 / プロソディー |
研究実績の概要 |
通言語的に観察される音声・音韻現象であるダウンステップに関して、日本語における実証的研究を行うことが本研究の目的であり、とりわけ以下の3点を扱う。 (1)ダウンステップの産出に関して、品詞によりダウンステップのパターンが異なるという仮説を検証する。(2)ダウンステップの有無およびその程度が知覚にどのような影響を与えるのか明らかにする。(3)文の意味解釈(comprehension)におけるダウンステップの果たす役割を調査する。 このうち、研究2年目である令和2年度は(1)に関するこれまでの研究結果を統合する論文を執筆し雑誌に投稿した。更に(2)と(3)の課題に着手し、(1)の議論から派生した統語論とダウンステップの関わりに関する研究も行った。 (1) 統語構造によっては形容詞がダウンステップを阻止することがあるのに対し、名詞と動詞にはそのような影響が見られないが、このことを、品詞により先行する語との関係性が異なることから説明した。具体的には、品詞の明示性質の違いに起因して、形容詞は先行する語と自然な関係性を作らない場合があり、その時にダウンステップが阻止されるという提案をした。また、この自然な関係性を阻む要因として語の形式も関係する可能性があったため、検証実験を行ったところ、仮説を指示する結果が出た(来年度に発表予定)。さらに、実験文では名詞を修飾する語が2つ使われているが、この2語の修飾語の順序とダウンステップに関して、先行研究(Watanabe 2017)の提案を検証する実験を行い、提案とは一部反対の結果がでた(来年度発表予定)。 (2)と(3)はパイロット実験を行った。ダウンステップが起こらないと不自然と知覚されるのか、また意味解釈に影響はあるのかを調べる知覚実験を行い発表した。来年度、実験方法などをリバイズして研究を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題(1)に関しては、研究成果を統合する論文を雑誌に投稿できた。またこれに派生する実験を2つ行うことができた。そして、課題(2)及び(3)にも、パイロット実験ではあるものの、着手し、研究会にて発表し、有意義なフィードバックを得ることができた。交付申請書の計画では、今年度は(2)及び(3)に着手する予定であったため、概ね順調に進展していると判断する。コロナ禍によりオンラインでの実験に手法を切り替え対応したため、当初計画を大幅に変更することなく研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、課題(1)に付随して行った実験2つの結果を発表し、雑誌に投稿する。それと同時に(2)及び(3)に関して、既に行ったパイロット実験の結果やその発表で得たフィードバックを活かして知覚実験をデザインし、研究を進める。オンライン実験を行うためのアプリケーション(JsPsych)の使い方を学ぶなど方法論も整ってきつつあるため、交付申請書の計画通りに進められる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、新型コロナウイルス感染症に起因する海外渡航の停止及び国内移動の制限のため、当初予定していた国際学会及び国内学会にかかる旅費がゼロ円となり、次年度使用額が膨らんだ。また、研究は概ね順調に進んでいるものの、コロナ禍でなければ知覚実験にかかる謝金がもっと多くかかる見込みであったが、この経費が最小にとどまった。次年度以降、国内・海外移動が再開されれば学会に参加するための旅費が発生し、また、本実験を始めるためそれにかかる謝金(実験協力者、アルバイト代を含む)が必要であるので、今回の次年度使用額を使用する計画である。
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備考 |
ホワンヒョンギョン・平山真奈美・加藤孝臣. 2020. Production and perception of Japanese downstep.国立国語研究所「対照言語学の観点から見た日本語の音声と文法」研究会12月11日. 髙津亘広・吉畑博代・加藤孝臣・浦野雅世. 2020. 「失語症者の動詞の表出における項の移動と項の数の影響」『コミュニケーション障害学』37(3):211. (発表要旨)
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