研究実績の概要 |
今年度はイギリス人ジョン・フライヤー(John Fryer, 傅蘭雅, 1839-1928)の没後にカリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley, UCB)に寄贈されたジョン・フライヤー・コレクション(John Fryer Collection, JFC)にて申請者が発見したSyllabary for the transfer of foreign names into Chinese(以下Syllabary)をとりあげてた。SyllabaryはEnglish-Chinese Technical Vocabularies, etcと題された全10種の草稿集の1種であり、現在の配列順では第2種にあたる。Syllabaryは鉛筆で1頁を縦4列に区切り、各縦列の左側にウェブスター式の発音記号で示された音節、右側に音訳漢字を記していく形式をもった、英語音節と音訳漢字との対照表である。 Syllabaryは西洋の事物や概念を表現するために19世紀から20世紀にかけて行われた翻訳語創造の試みを示すものとして非常に重要といえる。なぜならば翻訳語の一部を成す音訳語を統一的・系統的に生成するための試み、すなわち原語の一つ以上の音節に対し固定した漢字を与えるための近代早期の試みといえるからである。 今年度の研究ではSyllabaryの全体的な紹介とともに成書の背景、成書年代の推定、編者の推定を行い、音訳漢字の基礎方言の推定を試み、さらに音訳用字の特徴について分析を進めた。
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