研究課題/領域番号 |
19K00616
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
落合 淳思 立命館大学, 文学部, 非常勤講師 (20449531)
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研究分担者 |
佐藤 信弥 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 客員研究員 (10768162)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 漢字 / 造字理論 / 甲骨文字 / 金文 / 簡牘文字 / 声符(音符) / 上古音 |
研究実績の概要 |
本研究は、漢字の字形(文字の形)・字義(文字の意味)・字音(文字の発音)について、その機能変化の時代的傾向を分析することを目的としている。 2020年度については、これまで学界で概念や術語が共通されていなかった漢字の各要素や成り立ち(字形の起源)、およびその歴史的変化の過程などについて整理・定義づけしたものを「漢字の成り立ちと用字法に関する分類」として発表した。また、一般向けの書籍として『漢字の構造』を公刊した。漢字の字形構造について、それが作られた古代中国の社会や文化と関連付けて解説したものであり、本研究課題において判明した事柄(字源や字形変化など)も反映している。そして、研究期間全体の成果として、『漢字字形史字典【教育漢字対応版】』を執筆中である。これは約1,000字の教育漢字とその同源字について、殷代~楷書の諸字形を推定される継承関係によって表を作り、また字源や字形の変遷などを先行研究と対比して解説するものである。対象とする文字数は約1,300字、同源字を一つの表にまとめるので字形史表は約950になる予定である。以上について、代表者の落合が執筆し、分担者の佐藤が古代字形の検証や文章の校正を担当した。 そのほか、口頭で「上古漢語の複声母説と漢字の構造について」を発表した。近年では欧米を中心に、古代漢語の声母(音節の冒頭子音)について、複数の子音(複声母)を想定する研究が多い。しかし、実際には漢字構造誤解や西洋言語学と漢語の相違に対する不理解によるものであり、ほとんどの場合、複声母を想定する必要がないことを示した。この成果を含め、上古漢語から現代日本の音読みまでをまとめた一般書を執筆しており、2021年度に出版予定である。以上については、代表者の落合が執筆・発表をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画通りに研究ノートと一般書を執筆・発表した。また、最終年度の字典の公刊に向けて、現在執筆中である。 ただし、計画では漢字の字形構造の変化を中心にする予定であったが、字音(発音)の分析が予想よりも進んだため、今年度の実績としては字音に関係するものが多くなった。また、コロナ禍の影響により、アルバイト雇用の時間が減少し、字典に使用する古代漢字フォントの製作が若干遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度については、字音についての一般書を発表する予定である。内容は、字音の歴史、字音に最も強く関わる形声文字の構造、上古音から日本の音読みへの字音の継承と変化などである。これについては、代表者の落合が執筆する。 そして、研究の集大成として『漢字字形史字典【教育漢字対応版】』を公刊する。約1,300字を対象として、各時代の字形をフォント化し、その継承関係を表として挙げ、また字形史・字源・原義・先行研究との比較などを解説する。また冒頭には概論として、漢字の歴史、漢字の成り立ち、漢字の用字法、漢字の字音などを掲載する。これについては、代表者の落合が執筆し、分担者の佐藤が古代字形の検証や文章の校正を担当する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で、アルバイト雇用によるフォントの製作が若干遅れており、それに関わるアルバイト謝金が次年度に繰り越しになっている。2021年度の早い段階(4~6月)に謝金として使用予定である。
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