| 研究課題/領域番号 |
19K00621
|
|---|
| 研究機関 | 東北大学 |
|---|
研究代表者 |
大木 一夫 東北大学, 文学研究科, 教授 (00250647)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
| キーワード | 言語変化の要因 / 言語変化の過程 |
|---|
| 研究実績の概要 |
言語史研究としての日本語史研究は、きわめて重要な課題である言語はなぜ変化するのかという側面に十分に答えてきたとは言いがたい。そこで本研究は、言語変化の過程とその段階のモデルを構築しつつ、方言研究などの文献日本語史以外の分野の成果も活用して、言語変化の要因にはいかなるものがあるのかということの類型の枠組みを構築し、言語変化の要因研究の基盤を固めることを目的とする。
言語変化の要因を考える前提として、言語変化の過程・段階というものがどのようなものであるのかということの検討が欠かせない。そこで、本年度は先行研究のモデルをふまえつつ、言語変化の過程・段階のモデルをあらためて検討した。コセリウの言うように、言語が変化するのは、新たな表現目的によって、すでに準備された技術と資材を利用しつつ、表現を創り出すということなのだとすれば、(a)言語接触・(b)言語の内在的な力といった点を言語変化の原因とする議論は、それでは不十分であり、また、言語変化の要因を(A)生理的な要因・(B)認知的な要因・(C)社会的な要因のように分類するとするものも言語変化の要因分析に届いていないといえる。それらは、むしろ言語変化の過程のあり方の類型の一端であると考えられる。結局は、言語の変化というものは、言語の機能的な効率性や表現の目的に沿うためという方向性でとらえるべきであるといえる。このような帰結は、言語変化の要因を考えるにあたって、有坂秀世の示すものを基礎として考えることの有効性の基盤となるものである。
そして、以上を基本として、従来指摘のあった「案出→試行→採用」という言語変化の段階につき検討を加え、言語変化の過程・段階のモデル構築をすすめた。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、言語変化の要因を考える前提として言語変化の過程・段階というものがどのようなものであるのかということの検討をおこなうことにしていたが、そのさらなる前提として、そもそも言語変化というものがいかなるものなのかという基礎的・原理的な検討を要することが判明した。そこで本年度は、この考察に一定の時間を割いた。その上で、言語変化の過程・段階についての検討をすることになった。しかし、上述のような基礎的前提を明確にしなければ、その後の検討が揺らぐことになりかねないため、必要な研究過程であったと考えられる。これは、必ずしも当初の計画通りとはいえないものの、まずは、本年度のようなプロセスを踏むべきであったと考えられる。その点で、「おおむね順調に進展している」と考える。
|
| 今後の研究の推進方策 |
本年度の検討に引き続き、当初の計画に従って、当面この課題に即した範囲での「言語変化の過程とその段階のモデル」を構築する。同時に、従来の文献日本語史研究、また、方言研究における言語変化について論じている研究の分析をすすめ、そこから汲み取れる言語変化の要因を整理する。また、本年度の検討から、変化の要因の大枠は、機能的な効率性を軸にしている有坂秀世の枠組みが利用可能と考えられるようになったので、この枠組みのもとでの精細な検討をすすめていく。
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
本年度遂行予定の研究内容についての前提となる基盤的・予備的な考察が必要であることがわかったため、その検討に一定の時間を当てた。その結果、調査データの整理などをアルバイトに依頼する、その費用としての人件費・謝金が支出されなかったことによって、次年度使用が生じた。次年度は、この作業にも力点を置くため、人件費・謝金の支出を増やす予定である。
|
