研究課題
本研究の目的は,東日本大震災による福島県被災地域の方言資料を収集するとともに,方言調査を介した被災地支援のための方法論について考察し「実践方言学」構築の一助とすることにある。東日本大震災によって甚大な被害を受けた福島県相馬・双葉地方(相双地方)の自治体を訪問し,関与型傍受法による方言の自然談話収集調査を実施する。危機方言化が懸念される相双方言の保存・継承に向けて方言談話資料を多数収集し,当該方言の総合的な記述・分析を進める。本研究で実施する調査は,学術目的のみにとどまらず,被災された方々の心的支援や被災自治体の復興支援をも兼ねて実施される。その支援の効果を検証し「方言研究による社会貢献」のあり方について被災自治体とも協働しながら検討する。2020年度以降,世界的なcovid19の蔓延により,予定していた東日本大震災被災地における調査はほとんどキャンセルせざるを得ず,一部理解の得られた地域でごく短時間の調査を実施するにとどまっている。本研究の調査が「傾聴支援」を同時に意図するものであることから,対面による調査は不可欠であり,協力をいただく方々の年齢も考慮すると,調査の再開に至るのは率直に言って大変困難な状況であった。2023年度は,covid19感染症の感染症法の位置づけが5類相当へ変更となったことを踏まえ,引き続き感染には留意しつつ,2019年以前に実施していた本格的な談話調査を再開した。これまでに調査が行えずにいた相馬郡飯舘村および双葉郡双葉町にも協力を依頼し,高年層話者の談話資料を収集できた。これにより,震災以降継続して実施してきた他の調査データとあわせ,原子力発電所事故によって避難指示が発令された福島県内全自治体の談話データが整った。
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立正大学文学部研究紀要
巻: 40 ページ: 57-75
日本語変異論の現在
巻: 0 ページ: 209-223