近年、他言語と頻繁に接触を繰り返してきた言語(英語やスペイン語など)は体系や構造が単純になる傾向があるとする主張がなされている。本研究課題はこの動向を踏まえ、日本語のいくつかの方言を、他方言との接触の度合いという観点から分類し、それらの方言の間に複雑度の違いがあるかを検証した。 結果、方言のうち他方言との接触があまりない方言は独立した文法要素が連鎖する分析的な特徴を持ちつつも、そこに複雑な音声規則がかぶさって標準語とは異なった表層の形をとりがちであること、都市部の、他方言との接触が多い方言の文法要素は、分析的でありつつも、その文法的な特徴をより強める傾向があること、などを明らかにした。
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