研究課題/領域番号 |
19K00628
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
堀畑 正臣 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (30199559)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 梅津政景日記 / 江戸初期地方古記録 / 古記録の文体 / 記録語法 / 記録語 / 文章・文体 |
研究実績の概要 |
梅津政景日記の文章・文体は、日本語の語序形式に一部返読語の句構造を取り込み、「以前ニ、下ヘ」等格助詞を小仮名で表記する形式で漢字平仮名交り文である。①会話の構文は「申分ハ、『~』由申候」か「申分ハ、『~』と申候」の形式である。返読語句も「如御例之」「不申」「被申」「可出由」「無御座」等で語句の長さも短く熟語的である。「有り」は「委籠帳ニ有」のように文末に来る。②複文は「~間、~處ニ/處ヲ」や「~候へとも、~間、」等の複文形式が多くある。「~間、~間」もある。 表記は、日記の初年度には「於い来ニハ(以来ニオイテハ)」「御存不被知故(ゴ存ジ知ラレザル故)」「不届成人於有之ハ(不届キナル人コレ有ルニオイテハ)」等、難読表記もある。 語法は、節を作り複文となる形式名詞に「~間」「~處ニ/ヲ」の他に、句になる「上・内・儀・ためニ・段・通・分・外(ホカ)・故・由・様ニ」等がある。接続詞に「左候ハバ・左候へバ・さらば・乍去・然處ニ・然共・然ハ」等が見える。接続助詞に「~候へば・~候へとも」がある。「併(シカシナガラ)」は逆接の接続詞である。 敬語では、謙譲語として「約束致」「籠者致」「慮外致」等の「~致」類と「差越申」「相渡申」「物語申」等の「~申」類、「罷通」「罷立」「罷成」等の「罷~」類が見える。「罷~」は「被罷帰」「被罷越」のような「被+罷~」もある。この他「被参」「被申」も尊敬語として使用される。「被賜・被給」はなく(「給ふ」あり)、「被下・御~被下」や「差上」が見える。「御~被成」「御~有」(少)「~御座候」「被為~(~セラル)」「以(モテ)~被(ラル)~」(少)も見える。 語彙は、中世後期京都の古記録に使用された記録語「雅意・計会・活計・入根・籌策・比興・秘計・以外・与奪」が見えない。「不届・用所・才覚・算用・籠者」や鉱山用語(間分・赤湯・ろかす)がある。「糸+知=調ベル意」や「塩味を以/塩味致」が独自である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
梅津政景日記の調査を行い、記述研究に必要な項目の選り出しを行った。大日本古記録で9巻ある全体の記録文書の始めと中間と終わりの部分について、分量的にもう少し調査を加える必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、梅津政景日記の調査を行い、記述研究に必要な項目の選り出しを行った。梅津政景日記は、もともと2021年度も継続して調査する計画であるので、対象とする項目を絞って定めて、調査の進展を早めて行きたい。そうして、少し前の時代の日記である鹿児島の上井覚兼日記や室町後期の京都の古記録との比較検討を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度が計画の初年度であった。予定していた物品購入物は概ね購入し、研究にとりかかることができた。2019年度に予定していた実地調査分の残りが未実施となり、その分の予算が残った形である。購入すべき文献等も2019年は研究にとりかかる分は概ね購入できたので、2020年以降研究費が少なくなる事を踏まえ、2020年度の調査の為の出張費分と物品購入費に当てることとした。
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