研究課題/領域番号 |
19K00628
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
堀畑 正臣 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 名誉教授 (30199559)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 『梅津政景日記』 / 『上井覚兼日記』 / 『伊達家文書』 / 『相良家文書』 / 「被賜・被給」 / 「被為(〔さ〕せらる)」 / 「仕合」(亡くなる)の意 / 「塩味を以(って)」 |
研究実績の概要 |
令和2年(2020)度は秋田の『梅津政景日記』(以下『梅津』と略)の調査を継続し、薩摩の『上井覚兼日記』(以下『上井』と略)との違いを考察した。『上井』に関しては『筑紫語学論叢Ⅲ』(風間書房2021年3月)に「『上井覚兼日記』における「被賜・被給」をめぐって」を掲載した。江戸期の『梅津』には「被賜・被給」の例は見えず、「給(タマワル)」の例が見える。同じ「給(タマワル)」でも16C後半の『上井』と17C初頭の『梅津』では用法・意味に違いがある。『上井』と『梅津』で意味が違うものに「時宜」「弓箭」がある。また『上井』には3巻で36例の「令(シム)」が見えるが、『梅津』には9巻で3例しかなく、「令(シム)」は減少した。『梅津』は「ス・サス」を「為」で表記し「為取申」は「取らせ申す」で「被為持」は「持たせられ」である。『上井』では「被為」は仮名「~させらる」となる。 『梅津』で注目される語句に「仕合(死ぬ)」や「塩味を以って〔厳しくカ〕」がある。『上井』特有語として「家景(家来衆)・明合(空きカ)・柴(祭礼)」がある。中世京都の古記録に見え、『上井』にも見えるが『梅津』には見えない語として、「涯分・格護・校量・生害・入魂・斟酌」等の語がある。中世の「勝事」は『上井』では「笑止」になり意味も変化するが、『梅津』にはまだ「笑止」は見えない。 『梅津』では、文章表記や会話形式の記述が日本語の語順に近づく。漢文的語法は『上井』に「豈・雖・況」が見え、『梅津』に「いわんや」「いへとも」が各1例ある。「縦~共」は各4例、仮名の「たとへ~とも・ても」は『上井』に1例、『梅津』に17例ある。「雖」は中世から変化して「候へ共(とも)」で使用されている。 1500~1650年の『相良家文書』では『島津家文書』と共通する九州方言的語句「案利・順逆・閉目」等が見られ、奥州の『伊達家文書』との差異がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は新型コロナの影響により、4月より遠隔授業の為の録画作成やパワーポイントの作成と音声入れ等で毎週授業の準備に忙しく、調査に多くの時間をかけることが困難であった。また、東京大学史料編纂所への用例確認調査もできないままであった。焦点を絞って調査は行ったが、今後比較検討をし、違いを明らかにするという点でまだ更なる考究が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度で定年退職したので、令和3年度からは多くの時間を研究にかけられると思う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は4月当初から新型コロナの蔓延により、調査等の出張の自粛で一度も東大史料編纂所等に調査に行けなかった。そのため、旅費関係が未使用になったことが大きな原因である。令和3年度は新型コロナが収まれば、調査に行けるようになるので、調査を実行することで研究費の使用ができると考えている。
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