研究課題/領域番号 |
19K00628
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
堀畑 正臣 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 名誉教授 (30199559)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 16世紀の古記録・古文書 / 戦国遺文の『後北条氏編』 / 横合(之儀) / 立柄 / 生涯 / 生害 / 手苦労 / 古文書の「掟書・定書」 |
研究実績の概要 |
令和4年度は、16世紀の古記録・古文書の調査として、戦国遺文『後北条氏編』を調査し、他の地域の古文書類と比較を行った。その中で「横合(之儀)」(手順・道筋を無視して無理を押し通そうとする)は東国の古文書に用例が見え、西日本や九州の古文書には用例が見えず、東日本の古文書用語であること。「立柄」(主に戦の状況、様子)は、九州や中国地方の古文書に見られる語であることが判明した。また、『日本国語大辞典』『時代別国語大辞典 室町時代編』『日葡辞書』や古文書用語辞典類にも掲載のない「手苦労」という語も見つかった。そのほか、意味・用法・分布について、他地域の古文書との比較を行なうサンプルとして「涯分」「左道之至」「時宜」「入眼」「生涯」「勝事」「調儀」「調法」「取懸」「働・動」「走廻」「見合」等の古文書用語を洗い出した。 次に、西日本国語国文学会(R4年9月10日)のシンポジウム(テーマ「武士の時代と国語・国文学」)のパネリストとして、「武士の時代と古文書・古記録の言葉」と題して報告を行った。そこで①『平家物語』諸本における武士の会話として「宇治川の先陣争い」の梶原景季と佐々木高綱の会話を示し、諸本により違いがあり、かつ、武士言葉としての特徴は少ないこと、②『覚一本平家物語』における改まった場面での会話の特徴を述べ、③室町中期~江戸初期の記録語と抄物や狂言、天草版キリシタン資料の言葉の比較を行い、④古記録や古文書の掟書・定書に見える武士の言葉を論じた。④で「生涯」「生害」「見相ニ」(見つけ次第)「廉かましき」(粗暴で、やたら難癖をつけ非難する)「立柄」「横合」「涯分」を説明した。武士の時代の生きた言葉として古文書の「掟書・定書」の重要性を述べた。 更に、古記録・古文書から「生涯」と「生害」の用例を集め「「生害」表記の出現とその意味ー「生涯」から「生害」へー」を投稿し採用された(印刷中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和1年度から令和4年度での研究計画であったが、うち3年間はコロナ禍の状況で、授業関係の遠隔授業対応によるパワーポイントの授業作りで時間を取られ、調査そのものの進展もままならなかった。令和4年度も12月まではコロナ禍の状況で、文献調査も移動の自粛で、漸く令和4年12月に1度出張し、用例の影印での確認や文献調査を行うことができた状態であった。また、令和4年の1月に、母親の体調が悪化し入院した。その後、令和5年2月中旬に亡くなった。それらの手続きや看病や葬儀等に時間を費やした。そのような中で、これまでの遅れた分の調査を補いつつ、調査を進めたが、計画通りとはいかなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1年間の研究延長を申請して認められたので、今後調査を進めると共に、ほかの地域の古文書との比較検討を行い、それぞれの特徴を洗い出す所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度から令和3年度にかけて、コロナ禍のため、研究の進捗が思うようにいかず、調査のための出張もなかなか出来ず(令和4年の12月に漸く調査を1度行なった)、計画の1年延長を申し込み、認められた。残額は871,332円である。これを物品費60万、旅費20万、その他71,332円の計画で使用する予定である。
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