福祉言語史の基礎資料としての近代日本語点字資料の調査と整備

2019 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 19K00630
• 研究機関: 國學院大學
• 研究代表者: 諸星 美智直 國學院大學, 文学部, 教授 (00220111)
• 研究分担者: 伊藤 孝行 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (00588478) ; 中野 真樹 福島学院大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (30569778)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: 近代点字資料 / 点字雑誌 / むつぼしのひかり / 近代語 / 学術用語 / 学術講演

研究実績の概要

近代日本の障害者言語教育史のうち、視覚障害者教育史の主要な資料である近代日本語点字資料は、同時期の歴史的仮名遣いによる漢字交じり表記と異なり、点字によってほぼ表音式で表記されているため、近代の学術・教育・文化の多方面にわたって音韻・語彙・語法・表記などの研究資料として極めて貴重である。
しかしながら、従来、近代の点字資料は近代日本語の研究者に言語資料としての重要性がほとんど知られておらず、また、触読文字であるため摩滅の危険性があり実物を調査したり、利用しやすい形態で公開されることも希であった。
そこで、本研究では、研究分担者とともに近代点字資料の中でも特に近代語研究の資料としての観点から調査対象の選定を行い、近代の学術・教育・文化に関わる語彙の漢字音や清濁などの貴重な用例が多く、学術講演がほぼ発音通りに表音式に分析できる点字雑誌『むつぼしのひかり』を中心的な資料として、撮影にあたっては専門性の高い業者に依頼して目視によって点字の凹凸が鮮明になるように画像加工を施し、これによって表音式表記の墨字版を作成して、コーパス化のためテキストデータの形態素解析を行い、またテキストアナリシスを行ってその文体・語彙・表記の特徴を検討することにした。また、全国の歴史ある視覚特別支援学校の同窓会誌が存在する可能性があるため、近代共通語のみならず方言の音韻・語彙・語法の資料としても期待できるため調査対象を広げることにした。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2019年度には、研究対象となる近代点字資料のテキストの写真撮影とデータ化のために、研究代表者と共同研究者で会議を行ない、点字雑誌『むつぼしのひかり』の資料価値の検討を行ったが、2020年1月以降、新型コロナウイルスによって状況が日々深刻化してきたため、資料を所蔵する視覚特別支援学校・点字図書館等への訪問を見合わせている。

今後の研究の推進方策

近代点字資料を所蔵する視覚特別支援学校、点字図書館等の訪問調査、写真撮影をしてデータ化を進める予定であるが、新型コロナウイルスが終息して所蔵機関への訪問調査、写真撮影が可能になるまで、当面はweb公開されている情報の収集を中心に対応する予定である。
所蔵機関への訪問調査が可能になった時点で『むつぼしのひかり』の写真撮影のための業者の選定・写真撮影を開始して、画像データから表音表記の墨字版を作成してテキストアナリシスを行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

2019年度は近代点字資料のうち、調査対象を選定し、研究方針を検討する会議のための共同研究者の旅費として支出したが、1月以降、新型コロナウイルスによる状況の変化のため主たる点字資料の所蔵機関への訪問調査・資料撮影ができないため、経費が使用できない状態である。終息して視覚特別支援学校等への訪問が可能になった時点で、訪問調査・撮影業者選定・写真撮影を実施して経費を使用する予定である。