研究課題/領域番号 |
19K00634
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
久能 三枝子 (高田三枝子) 愛知学院大学, 文学部, 准教授 (90468398)
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研究分担者 |
邊 姫京 国際教養大学, 国際教養学部, 准教授 (90468124)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 既存資料の分析 / 有声促音 / 分布 / 有声性 / 一般化線形混合モデル / 韓国語ソウル方言 / 弁別 / 音響的特徴の世代差 |
研究実績の概要 |
2020年度は本来の予定では国内で日本語音声を収録し、またその分析を行うことを予定していたが、全国的な新型コロナウイルス感染状況による困難が生じ、この計画については完全に停止せざるを得なかった。また手元の資料の分析作業等についても、代表者・分担者ともに、本務校の業務に追われ、またアルバイターである院生の都合もつかず、ほとんど進めることができなかった。 その中で、論文は代表者2本、分担者1本の次の計3本発表した。①東北における有声促音の分布についての論文、②代表者が2019年度に発表した内容を論文化したもの、③韓国語ソウル方言における母音の弁別に関する報告である。 ①は井上史雄氏を中心として長く継続的に行われたグロットグラム調査のデータを再分析するものである。この結果、有声促音形は東北内の各地で散発的にみられるが、しかし日本海側の山形県を中心とする地域にはこれが集中して現れることが分かった。 また②の論文では、一般化線形混合モデルを用いていくつかの音響的特徴が高年層と若者の世代とでどの程度かかわるか、そこに違いがあるかということに注目して分析を行った。その結果、若い世代では明らかにVOTとピッチが有声性と関わっているのに対し、高年層ではVOTとそのほかに今回iGap、およびvDelayと名付けた音響特徴の方が、ピッチよりも関わっており、かつその関わり方が複雑であることが示された。ただしこれらの指標については今後他地域の分析に進む前に、再度さらに検討が必要である。 ③については、母音の弁別が有声性に直接関係するものではないが、韓国語において有声性と同時に進む別の分節音の変化について、とくに聴取実験を通して明らかにするものであり、結果のみならず聴取調査の実施という点でも経験値として有益なものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は本来の予定では国内で日本語音声を収録し、またその分析を行うことを予定していたが、全国的な新型コロナウイルス感染状況による困難が生じ、この計画については完全に停止せざるを得なかった。また手元の資料の分析作業等についても、代表者・分担者ともに、本務校の業務に追われ、またアルバイターである院生の都合もつかず、ほとんど進めることができなかった。 しかし一方で、研究成果は3本の論文にすることができたので、上の区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
国内調査および韓国調査の実施については今後も厳しい状況がしばらく続くと思われる。 調査は感染状況とワクチン接種の状況を見極めつつ、必要最小限の範囲とするほかない。もしくは、調査は行わず、手元の資料の分析にとどめることになる可能性もある。 韓国調査は資料が手元にないため、実施を探っていきたいが、もし行えるとなっても、早くとも秋以降になると考えられる。協力してくださる可能性のある方と分担者は懇意の仲であり、連絡を取りつつ、無理のない範囲で実施を目指したい。 以上のことから、2020年度は、日本国内の手元の資料の分析とその成果の発表を中心に進めることとする。ただし一方で韓国調査の実施可能性を探っていく方向で進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、予算執行の様々な面に影響があり、かなりの額が次年度に回されることとなった。大きくは当初予定していた調査ができなかったこと、また学会の大会もほとんどがオンライン開催となり、出張費の支出がなかったこと、コロナ禍でのアルバイトや作業者の状況による人件費未消化、などが大きい。 次年度、可能なところから作業や調査、出張を再開する予定である。ただし、4月時点で国内の感染拡大の状況もあり、引き続き、見通しは良くない。現時点では、まずは手元の資料の分析等を中心に進める予定であり、次年度内での予算の消化には及ばない可能性もある。
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