研究課題/領域番号 |
19K00634
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研究機関 | 大正大学 |
研究代表者 |
久能 三枝子 (高田三枝子) 大正大学, 文学部, 准教授 (90468398)
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研究分担者 |
邊 姫京 国際教養大学, 国際教養学部, 准教授 (90468124)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 音声の音響特徴 / 再検証 / 有声性知覚 / fo / 地域差 / 世代差 |
研究実績の概要 |
今期間は、代表者は手元の資料の分析および他研究者との共同研究における音声の分析を進めた。分担者は聴取実験を行い、有声性の弁別におけるfoの関与についてさらに知見を深めた。 代表者は手元資料を用い、複数地域・複数世代による産出音声における複数の音響的特徴について、有声性との関係の洗い直しを進めている。具体的には、①VOTに対して、破裂開始後の声帯振動開始時点、母音開始時点という類似した指標のうち、どの指標が最も有声性の弁別に有効なのかを検証している。またその他に、②母音開始時点のfo、スパイクの強さ(インテンシティ)、破裂後のvoicingの開始と母音の開始のずれ、F1とF2の相対的時間の前後関係、また破裂後のvoicing開始から25msecの各周波数帯域のintensityについて関連を検証している。最終的にはこれらの指標間の影響の強さを一派化線形混合モデルによって検討することを目指しているが今年度上記の分析に予想以上に時間がかかり、成果を公表できていない。今年度は論文を投稿したいと考えている。 一方で、外部の研究者とともに新たな資料(樺太日本語)を分析する機会を得、そちらでは成果を発表した(第2著者)。 分担者は知覚実験を主に研究を進めている。これまでの結果から、知覚(同定)においては有声性の弁別の手がかりに地域差はなく、どの地域も原則VOTを手がかりにしていること、foはVOTのみでは判断できないVOT=0ms周辺の音声に限定して使う聴者が20%程度いること、また、基本的にfoが高い=無声音、低い=有声音に結びつくが、同時に両方を手掛かりとするのではなく、どちらかだけを使うタイプの聴者がいることが分かった。これらの結果はすでに『音声研究』に投稿している(審査中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
代表者が育休明けおよび所属機関を移籍した関係で、研究にかける時間が減ってしまったこと、および出張等に支障が生じていることなど複数の理由がある。 今年度は最終年度であり、どうにか成果を出したい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度であり、研究成果を公開することに注力したい。 代表者は、現在進めている産出音声の音響的特徴について、①VOTとそれに類似する指標の有効性の検証、②破裂後のvoicingの開始と母音の開始のずれ、F1とF2の相対的時間の前後関係と有声性の関係の検証、③voicing開始25msecの各周波数帯域のintensityと有声性との関係についての検証を進めるとともに、これまでにも取り上げた他の音響的特徴(VOT、 fo、破裂のIntensity)とともに、各音響的特徴の総合的な貢献度を検証したいと考えている。 分担者は、これまでに進めてきた知覚実験を引き続き進め、①fo使用における個人内の揺れを見るための知覚実験を実施するとともに、②手元資料の分析によるfoの年齢的変化を計画している。またさらに余力があれば、③無アクセント地域(栃木、茨城)における、分節音レベルのfoの発達と、超分節音レベル(語アクセント)のfoの発達の関係を調べたいと考えている。 代表者・分担者ともに、以上の結果は適宜研究会や学会において発表そして論文公刊と進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では韓国や国内での調査や多くの出張を予定していたが、コロナ化、韓国での協力者の事情、および代表者の出産等によりその計画の変更が余儀なくされ、主に謝礼や出張費等の支出が大幅に減ったことにより、本研究の繰越金が前年度に限らす生じる状況が続いている。 本年度は分担者が関東での聴取実験を計画しており、まずはそこでの使用が見込まれる。そのほか、学会発表や論文公刊に主において生じる出張費あるいは資料費および印刷費における使用が見込まれる。
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