研究課題/領域番号 |
19K00640
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小林 隆 東北大学, 文学研究科, 教授 (00161993)
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研究分担者 |
松田 美香 別府大学, 文学部, 教授 (00300492)
櫛引 祐希子 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (10609233)
佐藤 亜実 東北文教大学短期大学部, その他部局等, 講師 (20829197)
中西 太郎 跡見学園女子大学, 文学部, 准教授 (30613666)
椎名 渉子 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 准教授 (70765685)
澤村 美幸 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (80614859)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 言語行動 / 地域差 / 談話資料 / 方言会話 / 場面設定 / 方言学 / 語用論 / 日本語方言 |
研究実績の概要 |
本研究は、言語行動の枠組みに基づいて100場面の「場面設定会話」を収録し、それを主な資料とすることで、日本語方言における言語行動の地域差を明らかにしようとするものである。この目的のもと、今年度は次の作業を行った。 1.100場面会話の収集と談話資料の作成(=本研究の中核をなす作業):まず、会話の収録にあたり、目的別に整理された言語行動の枠組みに基づき、100個の場面を設定した。その際、『生活を伝える被災地方言会話集』1~4を作成する際に構築した枠組みを基本的に踏襲することとした。これは、「要求表明系」「要求反応系」「恩恵表明系」「恩恵反応系」「疑問表明系」「疑問反応系」「感情表明系」「主張表明系」「関係構築系」という9つの分類による枠組みである。これに基づき、『生活を伝える被災地方言会話集』で収録した167場面の中から、各系のバランスを考慮して100場面を選定し、修正を加えつつ収録場面を決定した。 2.疑似会話型面接調査などの実施(=上記1のデータを補完するための作業):1で述べた100場面会話の話者は少人数のため、結果に個人差が影響する可能性がある。そこで、その資料を補完するために、会話風に質問を組み立てた「疑似会話型面接調査」を宮城県気仙沼市で実施し、高年層話者17名の調査データを得た。また、全国800地点で実施済みの分布調査データベースを本研究に利用できるよう加工した。 3.目的別言語行動の地域差の解明(=上記1と2に基づく総合的分析):今年度は新たな談話の収録には至らなかったものの、宮城県気仙沼市と名取市で収録した談話資料は存在し、かつ、2に挙げた「疑似会話型面接調査」の結果や全国800地点の分布調査データベースもそろっている。そこで、それらの資料を用いながら、依頼と受託の場面をはじめ、複数の言語行動について地域差を明らかにするための分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、「1.100場面会話の収集と談話資料の作成(=本研究の中核をなす作業)」「2.疑似会話型面接調査などの実施(=上記1のデータを補完するための作業)」「3.目的別言語行動の地域差の解明(=上記1と2に基づく総合的分析)」の3つを柱とするものである。 このうち、「1.100場面会話の収集と談話資料の作成」が中核となるものであるが、今年度は会話の収録に備え、目的別に整理された言語行動の枠組みに基づき、100個の場面を設定することができた。また、調査地点や話者の選定も具体的に進めることができたのは予定通りであった。しかし、コロナウイルス感染拡大に伴い、話者の協力を得ることが困難であると判断したため、実際の会話収録には至らなかった。この点が、総合的に見て、「やや遅れている」と判定する根拠である。 なお、「2.疑似会話型面接調査などの実施」は、疑似会話型面接調査を宮城県気仙沼市で遂行することができた。また、全国800地点で実施済みの分布調査データベースを本研究に利用できるよう加工できたのも予定通りである。 さらに、「3.目的別言語行動の地域差の解明」は、1回目の会話収録作業が行えなかった影響はあったが、それでも、これまで蓄積した会話資料や「疑似会話型面接調査」の結果、全国800地点の分布調査データベースをもとに、複数の言語行動の地域差についての考察を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、今後も当初の計画に従って作業を進めていく予定であり、特に推進方策に大きな変更はない。ただし、「1.100場面会話の収集と談話資料の作成(=本研究の中核をなす作業)」については、今年度、コロナウイルス感染症拡大の影響により会話の収録調査ができなかったので、残りの3年間の間にその遅れを取り戻し、最終的に100場面の会話の収録を完成させたいと考えている。来年度、収録を予定していた場面に、今年度未収録分の2分の1程度の場面を追加し、合わせて作業を行う予定である。 「2.疑似会話型面接調査などの実施(=上記1のデータを補完するための作業)」と「3.目的別言語行動の地域差の解明(=上記1と2に基づく総合的分析)」についても、引き続き作業を継続していく。特に、全国800地点の分布調査データベースをもとにした言語行動の地域差についての考察は、言語行動の目的に沿った体系的な項目立てのもとで進め、一定の成果を得たいと考えている。そのデータベースの公開にも取り組んでいきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、1回目の会話収録を予定していたが、コロナウイルス感染症の拡大に伴い、話者と調査者の安全が確保できないと考え、調査を実施しなかった。この会話収録作業に関わる費用が次年度使用額として残ることになった。来年度は、今年度に予定していた収録場面についても半分ほどの場面を、当初予定していた分に加えて収録する計画を立てている。
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