研究課題/領域番号 |
19K00647
|
研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
浅川 哲也 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (50433173)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ら抜き言葉 / です / 人情本 / 春色連理の梅 |
研究実績の概要 |
現代日本語の先端的な変化の動向を分析するために、江戸時代末期の江戸語を比較対象として、丁寧語の助動詞「です」を採りあげ、独自に開発した江戸時代末期人情本の本文データベースを用いて調査と分析を行った。現代語における「です」(形容動詞・助動詞の活用語尾を含む。以下同じ)は、助動詞「ます」と並び、丁寧語として口語では欠かすことのできない語である。しかし、「ます」が「参らする」などを語源として中世以来の明らかな語史をもつのに比較して、現代語の「です」はその歴史が浅く、現在のように丁寧語としての「です」使用が一般化したのは明治20年代以降であるともいわれている。「ます」に比較すれば、現代語の「です」は、近代になってその使用が一般化した語であるにも関わらず、後述するように「です」の語源には諸説があり、いまだ定説を見ないところがある。しかし、今回の調査と分析によって、現代語の「です」の語源を解明した。 また、招待講演として、「日本語の危機的状況について─ら抜き言葉・ら入れ言葉・れれる言葉─」(令和2年度國語問題協議會第106回國語講演會、会場:日本倶樂部・2020年11月7日)、「ら抜き言葉と日本語教育」(国際シンポジウム「外国人材育成と日本語・日本語教育」会場:東京都立大学オンライン・2021年2月23日)の2件を行った。現代日本語の先端的な動向と比較する基準のひとつとして、江戸時代末期人情本である『春色連理の梅』(四編~五編:嘉永3年・1850年刊)を採りあげ、その本文テキストの正確なテキストデータ化を行った。この成果を学術雑誌において公開した。「春色連理の梅 四編~五編(翻刻)」『人文学報』517号-7、pp.1-32、2021年3月。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 国際シンポジウムにおける招待講演1件、国語問題協議会における招待講演1件、共著書1件、学術論文1件という研究成果をあげることができたので、当初の研究計画のとおり、おおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
開発したデータベース等を用いて、助動詞「れる・られる」、助動詞「せる・させる」、サ行変格活用動詞「する」などの助動詞を含む相互承接における先端的な動向について調査分析を行う。2021年2月現在、新型コロナウィルス感染防止対策が進行中であり、日本国内の学会が中止またはオンライン開催となっているという状況がある。今年度も学会における研究成果の機会が減少すると考えられるが、学術論文などによって、研究成果を公開したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
概ね順調に研究活動が進捗したが、新型コロナウィルスによる学会の中止またはオンライン化によって、学会参加が困難であったこと、新型コロナウィルスによる勤務校大学の閉鎖で研究補助員の確保が極めて困難であったことによる。
|