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2019 年度 実施状況報告書

副詞における程度的意味・評価的意味の発生の研究―漢語副詞を中心に―

研究課題

研究課題/領域番号 19K00648
研究機関京都府立大学

研究代表者

鳴海 伸一  京都府立大学, 文学部, 准教授 (90611799)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード語史 / 意味変化 / 類型化 / 漢語の日本的変容
研究実績の概要

本研究は、語の意味・用法が変化する事例のうち、副詞用法を発生させたものを対象に、個別の語史を考察することを目的とする。
本年度は、「遅々(として)」を中心に、トシテ型漢語副詞が特定の形式との結びつきを強め、表現が固定化する過程を考察した。「遅々」は、近代以降にトシテ型の副詞用法を獲得するとともに、「遅々として進まない」という固定的な表現を形成した。このようなものは、「統合句格」のうち「主述関係」の裏面化が進み、後行述語と「対等」の関係だったトシテ句が、後行述語に「従属」してそれに対する専門の修飾要素となったものと考えられる。「杳として(知れない)」「恬として(恥じない)」等が類例である。さらに、トシテ型の漢語副詞において表現が固定化されるということが、どのような現象であるのかを考え、それを漢語副詞や漢語形容動詞の歴史のなかに位置づけることをめざす分析をおこなった。
この「遅々」を対象とした語史研究は、「杳として」「恬として」等の事例を総合することによって 、副詞の意味変化のありかたを類型化して示すための足掛かりとなるものである。それによって、漢語副詞の発達を漢語の日本的変容現象のなかでとらえなおし、日本語における副詞の変化・発達の歴史において漢語受容のはたした役割を考察することへつながる。さらには、そのような理論的総合を視野にいれた個別の語史研究のありかたを、方法論的に検討することをめざすものである。
また、そうしたことを視野に、直近2年間の日本語学・日本語史、特に語彙の史的研究に関する研究状況の総括をおこなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

個別の漢語副詞の事例についての語史研究はすすんでおり、体系の変遷を明らかにしたり、(意味)変化の類型化をめざす準備はととのいつつある。ただし、程度的意味・評価的意味について直接的にあつかうような語史研究については、必ずしも十分な進捗はない。それでも、学界の研究状況を広くとらえることによって、漢語の日本的変容現象の中に副詞の意味・用法変化を位置付けていくための構想をたて、そのための個別の語史研究の方法論を検討する準備はすすんだといえる。

今後の研究の推進方策

副詞用法が発生した語のうち、程度的意味・評価的意味が問題になるものを対象に、個別の事例についての語史研究をひきつづきすすめる。それをうけて、(ⅰ)個々の変化の具体的過程を考察するとともに、どのような変容の事例があり得るか、その外延をさぐり、(ⅱ)個別の語史を総合することによって、副詞の意味変化における程度的意味・評価的意味の発生といった観点から理論的な体系化・類型化を試みる。それを、(ⅲ)日本語における副詞の変化・発達の歴史の中における、漢語受容のはたした役割を考察するための足掛りとし、さらに、ここまでの自身の研究を踏まえ、(ⅳ)個別の語史研究のあり方を再検討する。
(ⅰ)の内容として、具体的に語史をえがく対象には、以下のものを予定している。①程度的意味をもとに評価的意味を発生させたと考えられるもの…「かなり」等、②評価的意味をもとに程度的意味を発生させたと考えられるもの…「格別」等、③その他、程度・評価的意味におい て多義性をもつもの…「第一」「散々」等。それをもとに、副詞の意味変化の方向性の類型を考察する((ⅱ))。
(ⅲ)については、a. もともと程度的意味・評価的意味をあらわす漢語として受容したものと、日本語においてそれらの意味を発生させたものとの、歴史的前後関係、b. 漢語単独で副詞用法として使用されるか、「に」「 と」などのついた形で使用されるか、c. 評価的意味が、同一の語において、他の程度的意味などの意味に先んじて発生するか、遅れて発生するか、および、a~cの観点について、和語と漢語の間でどのような異なりがあるか、といったことを、個別の語史研究の中で指摘していくことに重点をおく。そのうえで、こうして意味変化の過程と類型をまとめたことをもとに、そのようなまとめにつながるような語史研究のありかたを再検討する ((ⅳ))。

次年度使用額が生じた理由

古代語の用例・データを収集するために、コンピュータおよびデータ整理用のコンピュータ・ソフトが必要である。また、コンピュータ周辺機器として、資料などの印刷・整理・撮影のための、プリンタ・製本機・デジタルカメラが必要である。さらに、機器等を研究期間中継続的に使用するための、消耗品類も必要である。日本語学・日本語史学関係図書は、基本的なものはすでに整備されているが、不足すると思われるものもあり、また、今後刊行されるものも想定される。その他、成果発表のための旅費として、各年にそれぞれ研究発表1 回分相当の旅費を国内旅費として想定している。電子的なデータの整理、および確認のためにも各年に謝金を想定している。
こうしたことのために、翌年度分として請求した助成金と合わせて使用する計画である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] トシテ型漢語副詞における表現の固定化 ―「遅々として」を中心に―2020

    • 著者名/発表者名
      鳴海伸一
    • 雑誌名

      国語学研究

      巻: 59 ページ: -

    • 査読あり

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公開日: 2021-01-27  

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