世界の言語は、分析的言語や総合的言語などのタイプに類型化されることがある。言語類型論や歴史言語学では、英語は総合的言語から分析的言語へと変化 (分析化) していると長い間考えられてきた。しかし、近年、変異理論に基づく社会言語学の立場から、分析化の研究においては、レジスター(言語使用域) や変種 (方言) 間での多様性に着目することが重要であり、またそうすることによって従来の分析にとって反例となる事実まで明らかになることが指摘されている。本研究では、分析化を見せる構文の1 つと称される英語比較級構文を取り上げ、レジスターや方言という変異理論で注目される変数に加え、構文 (の機能)や共時性・通時性といった新たな変数を加えた調査を、コーパスを用いて行った。 本研究の目的は、認知社会言語学的アプローチを使用することにより、これまで未解明であった分析化現象に見られる豊かな多様性や変化のメカニズムを統一的に明らかにすることであった。具体的には、同構文に関して、レジスター、変種 (方言) 、構文 (の機能) 、共時性・通時性などの変数と分析化との関係性の解明に取り組んだ。 研究には、Corpus of Historical American English (COHA) とCorpus of Global Web-Based English (GloWbE) を主に使用した。研究の結果、英語比較級構文の分析化は、レジスター、構文のプロパティ、変種 (方言) などの複数の要因が関わっていることが明らかになった。最終年度には、それまでの研究成果を俯瞰し、分析化現象のみならず、本研究の成果は今後の言語学の発展にとってどういった意味を持つのかを考察し、学会発表や国際雑誌への投稿準備に取り組んだ。
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