研究課題/領域番号 |
19K00661
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
渡辺 秀樹 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 教授 (30191787)
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研究分担者 |
大森 文子 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 教授 (70213866)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メタファー / 英詩 / 擬人化 / 古英詩 / Beowulf / 翻訳 / レトリック / 系譜 |
研究実績の概要 |
本研究課題「英詩メタファーの構造と歴史 II」は、先行する「英詩メタファーの構造と歴史」の研究方法とテーマを引き継ぎ、認知言語学専門の分担者と共同で、古英詩から現代英米詩を対象に、身体部位名・動物名・感情表現の3つのカテゴリーが関わるメタファー表現の構造性と歴史的伝搬を明らかにすることを目指している。 初年度2019年には3度の英国出張を計画し、7月に国際学会で古英詩のメタファー関係の発表、9月に英国図書館での未見寓意詩の閲覧と転写、3月に再度の英国図書館訪問で、これまで12年間に出版した19世紀動物寓意詩7点の本文再校正を行う予定であった。 下の進捗状況欄でも示したが、学内特殊業務の責任者となって7月に外国出張がかなわず、コロナウイルス蔓延による渡航禁止のため、3月の英国図書館での校正作業も出来なかった。しかし9月の英国出張では、The Lion's Parliament (1808)という動物寓意詩を転写翻訳し、分担者大森文子がその本文と脚注を基にメタファーの構造性を分析する30ページの和文論文を出版出来た(2020年5月)。本詩はこれまで論考した6点の動物寓意詩と異なり、ナポレオン戦争を題材にしている点で、国を表す動物表象という新たな視点が得られ、メタファー義の考察に歴史的背景の基礎知識が重要であることを再認識した。 なお、分担者は日本語短詩形文学のメタファー論考の第一人者として、『認知言語学の最前線』という論文集への寄稿を行った。また、本共同研究における成果を取り入れた大学生のリーディング用教科書Advanced Reading Word to Wordを出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
9月に英国に出張し、英国図書館で未見の19世動物寓意詩を転写翻訳を行い、共同研究者とその詩について和文論文を出版することができたが、これが唯一の成果で、一連の寓意詩研究論文を編集し出版するには至っておらず、英文論文国際出版も本年度はかなわなかった。 その大きな理由は、所属部局大阪大学言語文化研究科の研究棟の改修に伴う引っ越しで、12月まで個人研究室が豊中地区になく、12月から1月にかけて引っ越し作業で棟内が混乱したためである。もう一つは、学内の重い業務の責任者となり7月の国際学会への出張ができず、かつコロナウイルス蔓延による海外渡航禁止によって、3月に予定していた英国出張も出来なかったことである。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方向性として次の3点を考えている。 1. 『英語動物名のメタファーI, II』(仮題)の出版を目指して、手元にある和文論文14本と19世紀英国児童向け動物寓意詩7編の翻訳とメタファー論考の原稿にクロスレファレンスを施し、補足・関連付をする編集作業を行う。 2. 古英詩Beowulfのメタファー表現を論じた10本の英文論文のうち、国際出版されたものを改訂し、一冊の研究書にまとめる。 3. 研究分担者の課題である「英語感情メタファー」の研究に参加し、本研究課題と密接に関連するShakespeareにおける感情語の表象と16-17世紀英詩をテキストにしたメタファー表現の系譜の研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス蔓延による海外渡航禁止によって、3月に予定していた英国出張および4人の研究グループによる英語歴史意味論翻訳研究会への出張が出来なかったことで、旅費に残額が生じた。
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