研究課題/領域番号 |
19K00670
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
中川 直志 中京大学, 国際学部, 教授 (70321015)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 統語論 / 生成文法 / 英語史 / 不定詞節 / tough構文 |
研究実績の概要 |
令和2年度においては、最小主義に基づくtough構文派生の代表的分析について比較検討するとともに、それぞれの分析がtough構文の不定詞節(以下、tough節)の範疇をどのように分析しているか考察した。 tough構文が研究対象となった当初、tough構文は不定詞節の目的語位置に併合された名詞句を主節主語位置に移動(以下、tough移動(以下、TM))させることによって派生されると分析された。ただし、TMはA(rgument)位置への移動であることからA移動であるが、その一方で、A’移動(空演算子移動)的特性を示すことが問題となってきた。しかし、だからと言って、tough節の目的語位置に併合されたNPがtough節のCP指定辞位置を経て主節主語位置に移動するとすれば、CP指定辞位置(Aバー位置)から主節主語位置(A位置)への移動がいわゆる不適正移動となる。この問題を、Hicks (2009, 2017)とObata and Epstein (2012)は移動する要素の内容を詳細化することによって解決しようとしており、tough節の範疇はCPであると分析している。これに対し、Longenbaugh (2017)はvにAとA’のそれぞれの素性を認め、複数のvP間に他のフェイズ(つまりCP)が介在しない限り、A移動とA’移動の特性を併せ持つ移動が[Spec, vP]を経由して連続循環的に適用可能となると分析している。この分析では、tough節の範疇はvPとなる。 現代英語の観察のみで結論を出すのは容易でないが、tough構文の歴史的発達を鑑みれば、tough節はNPからCPへ至る歴史的発達の過程にあると考えられ、CPまで発達していないことを示唆する証拠もある。これを踏まえ、上記理論的研究の理論としての妥当性と、歴史的観察との整合性の両方を検証することが望ましいと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は前年度に引き続き文献調査と電子コーパスを利用した調査を予定していたが、 新型コロナ対策による業務量が飛躍的に増大し、研究に十分な時間を充当させることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従って、遅れを取り戻すべく手を尽くしたい。その一方で、調査対象や調査手法の絞り込みなど、より効率的に目標を達成する方策についても考える必要があると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
1年目に計画していた海外出張がコロナ禍の影響で現在まで実施できずにいる他、PC等の納品が滞ったりしたことが主な理由である。研究の遅れを取り戻しながら適切に使用したい。
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