研究課題/領域番号 |
19K00676
|
研究機関 | 福岡女学院大学 |
研究代表者 |
能勢 卓 福岡女学院大学, 人文学部, 准教授 (70626837)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | セリフの文体分析 / コーパス言語学 / 英米演劇 / 電子化テクストの作成 / 談話情報付加コーパス / マニュスクリプト研究 |
研究実績の概要 |
コミュニケーションにおける発話者のメッセージの効果的伝達に関する文体研究は、有効且つ重要な研究であると考え、本研究において次の3点を中心に研究を行う予定である: ①これまでの英米演劇作品の文体研究において作成したEugene O’Neillの50作品[約107万語]のコーパスに談話情報と意味情報を付加した精緻化コーパスを作成し、その上で英米演劇テクストのコーパスを用いた台詞の文体研究を発展させていく[なお比較検証のために同時期の劇作家の演劇作品のコーパスの作成も行う]。この精緻化コーパスの作成のポイントは、50作品107万語のO’Neill作品の全ての台詞の中で特定のカテゴリーの話者と聞き手の語彙的特長やコロケーション語の特長を比較・分析することが可能になるところにある。それは例えば、50作品の全ての台詞の中で父親が娘に対して発話している台詞を抽出しword listを作成した上で、同様に母親が娘に発話している台詞を抽出しword listを作成することで、両者の語彙的特長の差異があるかを調査することが可能となる。 ②マニュアル作業で確認をした談話情報(例えばSpeakerやHearer情報など)をXML Editorのマークアップの形式に自動的に組み上げていくためのプログラムを開発する。この自動化プログラムにより、本研究において費やしているマークアップ作業の膨大な労力と時間が大幅に改善されるだけではなく、本研究と同様に談話情報をマークアップして精緻化コーパスを作成している他の研究者の研究活動に対して貢献することも期待出来る。 ③コーパスを用いた多角的文体分析に加えて、劇作家のアイデアノートやマニュスクリプトを調査・分析することを通して、創作過程において台詞に施された言語的工夫のプロセスの検証から、演劇作品の台詞における効果的言語化の一端を明らかにしていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在の課題研究「英米演劇の対話の文体分析と精緻化コーパスの作成」における2019年度の研究活動において、およそ次の2つの点において順調に進捗をした: (1)Eugene O’Neillの50作品[約107万語]のコーパスに談話情報と意味情報を付加した精緻化コーパスを作成し台詞の文体研究を発展させていく[比較のための同時期の作家のコーパスも作成予定] (2)談話情報のマークアップ作業の自動化プログラムの開発 (1)に関しては、O'Neillの50作品中の37作品の精緻化コーパスの作成を完了した。またこのコーパスを用いた研究発表としては、PALA 2019 (Annual International Conference of Poetics and Linguistics Association, The University of Liverpool)において、“‘Force of Meaning’ in Dialogical Speeches in Eugene O’Neill’s Mourning Becomes Electra”という題目で2019年7月11日に研究発表を行った。そして(2)のXMLエディターのOXYGENの形式にSpeakerやHearerのSocial StatusやRelationなどの談話情報を自動的にマークアップためのプログラミングを、研究補助をしてくれている助手の学生の協力をえてパイソンで構築した。その上で、開発したプログラムを本研究の関係者用のドライブを作成してアップし、研究代表である私や助手たちが必要に応じてプログラミングを利用できるようにした。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進に関しては、O'Neillの全作品の精緻化コーパスを完成させた上で、比較のためのMaughamとWilderの作品の電子化コーパスを作成した上で、精緻化コーパスへと発展させていく。 またマニュスクリプト研究に関しては、これまでにYale大学Beinecke図書館において調査した資料の整理分析を行うと同時に、現地への調査活動が可能になれば現地に赴き、O'Neillの後期の作品のドラフトなどの調査研究を行えるよう、Beinecke図書館と調整を行っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が「43,589円」ほど出てしまった。これは請求書による支払いの過程で2019年度中には実行されなかったが、研究活動上必要な支出として2020年度当初に予算執行されるものである。
|