研究課題
本研究は、英語のthough節の話し言葉における談話機能を明らかにすることを目的に行われた。データは、電子コーパスThe Corpus of Contemporary American Englishの話し言葉セクションから収集した。令和元年度は、独立節として用いられるthough節の談話機能について分析を行い次の点を明らかにした。(1)収集した独立though節は、対話の中で用いられる場合とナレーターの発話の中で用いられる場合に分けられる。(2)対話で用いられる場合、先行する同一話者の発話を受ける場合と聞き手の発話を受ける場合に分けられ、前者は「訂正譲歩」、後者は「訂正譲歩」と「不賛成」の機能を持つ。(3)ナレーターの発話で用いられる場合は、「訂正譲歩」と「新情報の追加」の機能を持つ。(4)独立節を導く話順の最初に現れるthoughは談話標識として分析できる。(5)独立though節は、文法化の節接続に関する単方向性の仮説の反例となる。令和二年度は、althoughとの比較という観点から独立though節の分析を行い、次の三つの相違点を明らかにした。(1)独立though節は独立although節よりも頻度が大幅に低い。(2)独立though節は独立although節よりも用法の種類が限られている。(3)独立節を導くthoughとalthoughはどちらも談話標識と分析することができるが、独立though節はalthoughと比べると文法化が進んでいない。令和三年度は、話し言葉における従属節としてのthough節について、Mizuno (2010)で報告された書き言葉におけるthough節との比較を行った。その結果、両者の共通点として、though節が主節に対して前置されるよりも後置される頻度の方が高いこと、標準譲歩、訂正譲歩、修辞譲歩の機能を持つことが分かった。
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Papers from the Thirty-Ninth Conference November 13-14, 2021 and from the Fourteenth International Spring Forum May 8-9, 2021 of The English Linguistic Society of Japan JELS 39
巻: 39 ページ: 143-149