一般的には文法逸脱とみなされる事例の創発と受容のしくみの研究を通じて、その背後には相互に位置づけられる関連表現のネットワークがあり、それぞれの表現は特定のジャンルや場面に対応した独自の解釈や談話・語用論的機能を担い、慣習的な表現として一定の拡がりを見せて定着しつつあることがわかった。インターネットの普及による多様なスタイルの可視化とメディアの拡張、そしてインターネット・コーパスの発達は、逸脱的な表現が可視化される契機になるとともに、フォーマルなテクストに依存するところの多い従来の文法記述を、言語使用に関わる側面を包摂したより多面的な文法モデルとして再構築する必要性を示唆している。
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