研究課題/領域番号 |
19K00684
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
堀田 優子 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (90303247)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 認知言語学 / 構文 / 事態把握 / 他動性 |
研究実績の概要 |
本研究は、日英語の様々な構文(表現形式)を取り上げ、認知言語学の観点から、根底にあると想定される認知主体の事態把握の仕方と表現形式の多様性との関係性やその動機づけを明らかにすることを目指すものである。また、日英語の小説とその翻訳をベースにした日英語のパラレルコーパスを作成して、大規模コーパスやWeb検索ではなかなかできない、コンテクストも踏まえた日英語表現の比較を行うことによって、言語間あるいは表現間の相違点や多様性を浮き彫りにし、事態把握による類型化の研究に対しても実証的な裏付けを与えようと試みる。 本研究の初年度にあたるH31(R1)年度は、「他動性(transitivity)」にまつわる言語事象を取り上げ、英語における他動詞文や自動詞文、受け身文で示される場合の事態認知の違いと、日本語のヲ格を取る表現とそれに対応する英語表現の違いに重点を置いて研究を行った。具体的には、まず「他動性」や構文研究に関する最新の研究動向を探り、これまでの先行研究から得られた知見をまとめ、問題点を洗い出した。それから、英語の大規模コーパス(BNC、COCA、WordBanks Onlineなど)や国立国語研究所が提供する日本語のコーパス、Web上の検索エンジンなどを用いて、「他動性」と関わる対象構文のデータ収集を行った。さらに、日英語の表現の違いをコンテクストも踏まえて直接比較できるように、まずは英語の小説1作品とその日本語翻訳を選定して、パラレルコーパスの作成にも取り掛かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、「他動性」や構文研究に関する最新の動向を探り、これまでの多くの先行研究の整理と認知言語学的観点からの検証を予定通り進めることができたといえる。しかしながら、日英語の対象構文に対する独自の具体的な分析については、十分に成果があがったとはいえない。それでも、研究成果の一部を、年度末に開催予定だった研究会で発表することになっていたのだが、COVID-19感染拡大防止のために中止となってしまい、発表することができなかった。次回の研究発表の機会に向け、さらなる研究成果が得られるよう、次年度以降も、精力的に研究を続ける予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず、日英語の他動詞文、自動詞文、受け身文で表される事態の捉え方の違いや、日本語のヲ格をとる表現とそれに対応する英語表現の違いなど、「他動性」の問題にまつわる事象について、認知言語学の観点から捉え直し、新たな分析を示したい。その際に用いる英語や日本語のデータに関しては、複数の学生に協力してもらって、次年度の早い時期に、英語の小説(原作)とその日本語翻訳から成るパラレルコーパスを完成させ、そこから適宜、データを採取する予定である。そして、研究の一部を成果として、研究発表や論文の形で発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)今年度、未使用の助成金が発生した理由としては、COVID-19感染拡大の影響により、年度末に開催が予定されていた学会や研究会が中止となったため、参加するための旅費を使わなかったことや、コンサルタントの協力に謝金が発生しなかったことなどが、主な理由である。 (使用計画)次年度は、国内外の学会に参加して研究交流を図り、最新の研究情報や資料の収集にあたりたい。また、パラレルコーパスをできるだけ早く完成させるため、複数の学生に協力してもらい、その謝金に充てる予定である。
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