研究課題/領域番号 |
19K00685
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
今野 弘章 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (80433639)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 語用論的認可 / 眼前性 / イマ・ココ |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度に引き続いて予定を変更し、Xヲナニスル構文(例:親の形見を何してんだ!)についての研究を進めた。これは、当該構文が、研究計画で予定していた現象以上に、本研究の主眼である「有標構文の特殊性が日英語の文法体系とどのような相関関係にあるか」というテーマと深く関わる重要な現象と考えられるためである。 今年度得られた具体的実績として、文頭のヲ格(Xヲ)が構文の使用場面上の特性により対象性が保証されて認可されるという仮説の妥当性を更に示すことができた。上記仮説の1つの有力な対案として、ナニスルの他動詞化を仮定してXヲの認可を説明するというものがある。昨年度まではこの対案について十分に検討できていなかったが、今年度の研究により、この対案には経験的な問題があることが明らかになった。関連する言語事実は、ナニスルがなくてもヲ格名詞句が単独で現れることがあるということ、ナニスルが動詞句全体を焦点とし、他動詞のみを焦点とする場合は(ナニスルではなく)ドウスルが用いられるというものである。また、構文の使用場面、特に眼前の事態から得られる情報によって話者がXヲを対象と捉えているという特性は、池上 (2007)が指摘する「日本語のイマ・ココへの拘り」という一般的特性に沿ったものであることが判明した。本研究では、Xヲを構文文法における意味での「構文の目的語」とみなし、Xヲという構文の目的語が日本語にとって自然な意味・語用論的環境において観察されると指摘するが、さきの考察はこの見立てを補強する。 これらの成果を盛り込んだ内容を招待講演(2件)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新たに加わった現象の研究に集中したため。また、オンライン授業の準備に時間がかかったために従来よりも研究に充てることができる時間が減少したため。そのことにより、当初予定していた現象の分析が進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
新たに加わった現象の分析が一段落したので、当初予定していた現象の研究を進める。また、来年度は最終年度でもあるため、本研究で分析した有標構文を捉えるためには、どのような文法モデルが適しているかという、本研究全体の意義についても考察していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で出張ができず、旅費が一切発生しなかったため。次年度使用額は、関連する学外の研究者に講演を依頼し、その謝金に充てたい。
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