研究課題/領域番号 |
19K00685
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
今野 弘章 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (80433639)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 有標性 / 類像性 |
研究実績の概要 |
今年度は、日本語の①イ落ち構文(例:「うまっ」)と②格助詞の語中挿入(例:「最の高」)について研究を行った。 ①は、本研究課題のうち、統語的時制辞を欠く主節の研究に関連する。研究の結果、イ落ち構文に見られる形態・統語的特徴(時制辞の欠如)と時制解釈上の特徴(発話時に固定)の間に成立する関係が、Levinson (1987)が指摘するゼロ照応形とその解釈の間に見られる関係(ゼロ照応形は最も情報価値の高い解釈と結びつきやすい)と並行的であるという見通しを得た。この結果は、時制と代名詞の並行性を指摘したPartee (1973)の見解を支持する。 ②は当初の計画にはなかったが、特に有標構文であるという点で関係するため、新たに着目した現象である。分析対象を「最の高」に限定し、当該表現を容認する話者にインタビュー調査を行った結果、次の2点が明らかになった。(i) 当該表現を伝達的場面/非伝達的場面のどちらでも使用できる話者と、専ら伝達的場面でのみ使用する話者が存在する。(ii) 即応的使用(例:美味しい食べ物を口に入れた瞬間に発する)と非即応的使用(例:美味しい食べ物をじっくり味わった後に発する)で比べた場合、非即応的使用の方が当該表現を容認しやすいと判断する話者が存在する。(i)のうち、当該表現を専ら伝達的場面で用いる話者の判断では、余分な機能語を持つ表現が、聞き手への伝達性を持つ表現に特化するという類像性が成立している。(ii)の判断では、相対的な迂言形式が非即応的反応を表すという類像性が成立している。これら2タイプの類像性は、今野 (2012)やIwasaki (2006, 2014)がイ落ち構文に関して指摘したものとちょうど対になる。 ①については、本報告書作成時点では未発表である。②については、研究会(2件)で口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本来であれば最終年度であったが、予定していた研究を進められていない部分があり、補助事業期間の延長を申請したため。なお、研究実績の概要に記した成果①は、当初2020年度に予定していた研究計画の一部と関係するもので、これにより、研究の遅れを若干取り戻すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要に記した成果①についての研究を更に進める。併せて、個別の現象に関する研究結果を踏まえた全体的考察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗状況(遅れ)に応じ、未使用分が生じたため。次年度には、主に、追加で必要になった図書の購入と学会参加費として使用予定である。
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