研究実績の概要 |
令和3年度は、前年度から引き続き、独立して生じる非制限的関係詞節(Which節)が話し言葉などのくだけた文脈で使用される傾向について、①英語の話し言葉の一般的特徴、②Which節の統語的・意味的・語用論的特徴、③関係詞whichと類義の代名詞it, thatとの比較に基づく機能上の特徴の3点から実例を追加、分析し、考察を行った。前年度は、研究対象がWhich節に限られていたが、令和3年度はSpeaking of whichも考慮に入れて、両者のwhichに共通する指示特性について検討し、分析の妥当性を確認した。 今年度進展した部分は、②の語用論的特徴と、③の代名詞it, thatとの比較に基づくWhichの機能上の特徴についてである。まず、Which節に特徴的な表現およびSpeaking of whichを用いた表現の分布状況と、同表現内のwhichをit/thatで入れ替えた表現の分布状況を比較し、両者の相違を確認し、それを受けて、whichの指示特性の検討を行った。その結果、Which節とSpeaking of whichのwhichは、その代名詞的な性質ゆえにit/thatと共通した指示特性を持つ一方で、それ自体で独特の指示特性を持つことが明らかとなった。この背景には、whichの持つ「既獲得情報を必ずしも指すわけではない」「指示集中的である必要はない」という特徴が関わっている。中でも、指示対象が話し手にとって既獲得情報でなく、whichが指示集中的でないことがit/thatとの違いを際立たせるwhichの特異な一面であるということが分かった。また、その特異性が現れやすい条件として、whichが情報処理の上で未完の情報を受けていること、また、その情報と並行して他の情報に意識を向けながら会話を進めるような文脈が関係していることも確認することができた。
|