研究課題
研究期間の最終年(2023)度には、英語史における破格構文の考察だけではなく、過去に研究に打ち込んだ日本語とディダ語(西アフリカ、コートジボワール)での特徴的な構文を調査分析する機会を得た。3言語における構文化研究を通じて、歴史的発達経緯を主軸に進めてきた研究が、対照言語学的成果へと拡がる可能性が確認できた。最終年度の具体的成果は以下の通りである。英語については、主に中英語から初期近代英語にかけて限定的に使用されていた副詞iwisを考察した。他のゲルマン諸語では現代でも副詞と形容詞として使用が確認できるが、英語のiwisは類推と再分析を経てI wis ‘I know, certainly’へと変化し、18世紀にはほぼ廃語化している。日本語については、「瞬間」という漢字語が副詞化する経緯を考察し、動詞の項や従属節の主要部を経て単独副詞化する現象を示した。ディダ語については、談話に繰り返し使用されるnIという語に注目し、左方転移機能、話題化機能、連接機能の連続性・類似性を指摘した。これらは系統発生的に異なる言語からの表現ではあるものの、単文レベルの個別現象ではなく、談話の中で繰り返し現れる特定の表現が破格構文へと機能拡張している。機能拡張の背景にある談話基盤性には、時代や地域も異なる言語間に共通する比較的強固なメカニズムが存在する可能性が見えてきた。研究期間全体を通して以下の研究成果が確認できる。まず、英語史における破格構文の創発には談話レベルの情報連鎖が不可欠であることが分かり、その後、日本語とディダ語でも同様の機能拡張が確認できた。先行研究では、構文を現代語における単文レベルの個別現象として捉える傾向がある。一方で、本研究課題では構文を談話レベルの複合現象と捉え、通時的考察により詳細な発達経緯を示し、他言語との関係性を重視した分析手順で調査を実施した。
すべて 2025 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件) 図書 (5件) 備考 (2件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Linguistic and stylistic approaches to speech, thought and writing in English: Diachronic and synchronic (eds. by Osamu Imahayashi, Michiko Ogura and Yoshiyuki Nakao, Peter Lang)
巻: NA ページ: TBA
Gengo Kenkyu
巻: 166 ページ: TBA
Japanese/Korean Linguistics
巻: 30 ページ: 319-333
『日本語と近隣言語における文法化』(ナロック ハイコ・青木博史(編)ひつじ書房)
巻: NA ページ: 157-185
Different slants on grammaticalization (eds. by Sylvie Hancil and Vittorio Tantucci, John Benjamins)
巻: NA ページ: 20-49
10.1075/slcs.232.01shi
『英語史における定型表現と定型性』(渡辺拓人・柴﨑礼士郎 (編)開拓社)
巻: 10 ページ: 145-168
巻: 10 ページ: 1-26
Journal of Japanese Linguistics
巻: 39 ページ: 5-14
10.1515/jjl-2023-2003
巻: 39 ページ: 3-4
10.1515/jjl-2023-2002
https://gyoseki1.mind.meiji.ac.jp/mjuhp/KgApp?resId=S001500
https://www.researchgate.net/profile/Reijirou-Shibasaki