研究課題/領域番号 |
19K00694
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
小倉 美恵子 鶴見大学, 名誉教授, 名誉教授 (60074291)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 言語変化 / 言語進化 / 複雑適応体系 / 多義語 / 史的データ / 脳の機能 |
研究実績の概要 |
これまで語彙拡散による英語史上の音韻、形態、統語、意味、語彙変化の研究を、複雑適応体系に内在する基本原理(淘汰、自己組織化、相転移、曖昧性と頑強性、ネットワーク)の観点から統合した。本研究では英語の多義語の歴史的発達を、Historical Thesaurus of Oxford English Dictionary (Historical Thesaurus), Early English Books Online(EEBO), WordNetからの膨大なデータと、光トポグラフィーを用いた脳の機能実験に基づき明らかにする。 本年度は、WordNetに基づき、動詞および名詞それぞれにつき、意味数がもっとも多い上位5語を選び、これらの多義語の起こる例文を、それぞれの動詞および名詞について、EEBO からランダムに500 文抽出した。次に多義語動詞については名詞、多義語名詞については動詞のどのような単語と共起するかを、それぞれの500文につき調査してデータ化した。予備的調査によれば、多義語動詞と名詞、多義語名詞と動詞の共起の仕方は、共起する単語の重複する部分は限られており、それぞれの多義語はそれぞれ異なった共起の仕方をしていることが明らかとなった。現在は共起する単語について、Historical Thesaurusに基づき歴史的な発達を調べ、発達史上での関係がどの程度近いものどうしが共起するのかをすべてのデータについて調査している。 また次年度に行う光トポグラフィーを用いた脳の機能実験で用いる英語多義語の刺激文を上記のデータ化された文に基づき作成した。動詞と名詞の共起の反映として脳の中でどのように概念の局所化が行われるかを念頭に置き、同義語、単義語の脳内での相関関係も視野に入れ、更に脳の中での語彙体系の歴史的発達の全貌を解明すべく、英語および日本語の刺激文を準備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、本年度は英語の多義語の歴史的発達について、Historical Thesaurus of Oxford English Dictionary, Early English Books Online, WordNetからの膨大なデータ収集と、光トポグラフィーを用いた脳の機能実験を並行して行う計画であったが、まず膨大なデータをできうる限り収集して、その結果に基づいて実験の刺激を作成するほうがよいと考えた。そのため実験自体は次年度に行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
多義語の歴史的発達を脳の機能から探るため、英米人と日本人による光トポグラフィーを用いた実験を行う。日本語の語順は基本的にはSOV語順であるが自由度がかなり高く、この点で日本語も古英語も談話構造と密接に結びついた統語構造が用いられていたと考えられる。中英語以降はSVO語順の緊密な統語構造に変化したことに伴い、多義語のそれぞれの意味は前頭葉、側頭葉に概念的局所化が認められることを明らかにする。動詞と名詞の量的共起データとの相関関係を調べて、どのような場合に局所的活性化が見られるのかを明らかにする。更に同義語、単義語の脳内での相関関係を視野に入れ、脳の中での語彙体系の歴史的発達の全貌を解明する。 実験と並行して、多義語の動詞と名詞の共起する単語について、Historical Thesaurus of Oxford English Dictionary に基づき歴史的な発達を調べ、発達史上での関係がどの程度近いものどうしが共起するかについて、すべてのデータを調査することを継続して行う。更に、単義語、同義語についても多義語と同様な調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、本年度に光トポグラフィーを用いた脳の機能実験を予定したが、実験は次年度に行うこととしたため残金が生じた。機器のレンタルとそれに伴う諸経費は次年度の実験費用として用いる。
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