研究実績の概要 |
これまで語彙拡散(lexical diffusion)による英語史上の音韻、形態、統語、意味、語彙変化の研究を、複雑適応体系(complex adaptive system)に内在する基本原理(淘汰、自己組織化、相転移、曖昧性と頑強性、ネットワーク)の観点から統合した。本研究ではこれを更に進めて英語の多義語の歴史的発達を、(1) Historical Thesaurus of Oxford English Dictionary, Early English Books Online, WordNetからの膨大なデータと、(2) 光トポグラフィーを用いた脳の機能実験に基づき明らかにする。 今年度は英語の多義語動詞と名詞の共起の反映として、脳の中でどのように意味概念の局所化が行われたかを英米人と日本人による光トポグラフィーを用いた実験で実証した。日本語の語順は基本的にはSOV語順であるが自由度がかなり高く、この点で日本語も古英語も談話構造と密接に結びついた統語構造が用いられていたと考えらる。古英語では、日本語と同様に、左脳、右脳の前頭葉、側頭葉全体に活性化が起こっており、更に頭頂部の感覚、運動野に向かって活性化が大きくなることが認められた。中英語以降はSVO語順の緊密な統語構造に変化したことに伴い、多義語のある意味は左脳の前頭葉、側頭葉に概念的階層的な局所化が認められることが明らかになった。
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