研究実績の概要 |
今年度は、昨年度まで続けていたthere/have交替現象を起こす属性名詞のデータベース作成と並行して、there構文の方でbe動詞後続の名詞句が[不定代名詞something+形容詞]となる構文現象(There is something special about her.)についてCorpuse of Contemporary American Englishを用いた予備的なデータ調査と、母語話者への簡易な聞き取り調査を実施した。その結果、目下のところ次の3点の性質が判明している。(i)somethingの後のスロットに出現する形容詞のタイプが、話者の主観的な判断を表すもの(different, special, strange, familiar, odd, weird, fishy, funny, magical, comfortingなど)に集中し、客観的・物理的属性を表すものは使用されない。(ii) about句の補部が個体指示に限定されず、行為・状態を表す場合が多い、(iii) about句の指示対象に関する属性に対する話者の判断を表すが、「なぜそうなのかはよくわからない」という含みがある。以上の点に、叙述類型論と認知的構文文法理論の観点からの考察を加えた論考を単著の和文論文(『タバード』36号掲載)としてまとめた。 また、there構文のbe動詞後続名詞句の意味タイプという観点からデータ収集している過程で、当研究プロジェクトが想定していたものとは少し異なるものの、英語のthere構文の研究では扱われることのなかった一連の現象が明らかになり、その記述的な一般化に着手した。
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