研究実績の概要 |
本課題1年目は日本国内の留学生別科・日本語学校、717校を対象として多読の実施の有無に関する調査を実施し、127校から回答が得られた。127校のうち33校で多読が実践されていた。回答が得られた教育機関の約25%が多読を実施していることがわかった。日本国内の英語多読における実施状況は高瀬(2010)にまとめられているが、日本語多読の実施状況はこれまで詳らかでなかったが、本調査によって実際にどのぐらいの教育機関で多読が実践されているかが明らかとなった。また、多読実施状況調査の結果から、多読に関心を持つ教員・教育機関の代表等、約40名を探し出すことができた。この調査の結果を現在調査報告としてまとめている。 他方、英語多読の論文等で言及されている教師の役割に関する記述を収集した。Day, R. R., & Bamford, J. (2002)が提唱する"10 principals" に教師の役割への言及がある。多読の実践を通じた教師の言語教育観・言語能力観の変容に関する調査研究はUozumi, K., & Takase, A. (2012).、YUYA,A.(2019). 等の先行研究があった。 本課題に関する2019年度の実績は、(1)ベトナムのタンロン大学で開催された言語文化教育研究学会第7回研究集会において「日本語教師の省察を促す3つの試み」と題して多読の実践を通じた日本語教師の省察について発表し、(2)タイのサイアム大学で開催されたタイ日研究ネットワークにおいて「字なし絵本から多読につなげる図書館活動―タイ・バンコクの幼小中高一貫校における取り組み―」を発表した。これらの発表に付随して、ベトナム、タイにおける多読の実践・研究のパートナーとなりうる人脈が形成された。
|