研究課題
2022年度は以下の2点を本研究課題の成果として発表した。(1) 日本国内の日本語学校を対象とした多読実施状況調査について、日本語教育学会の秋季大会でポスター発表を行った。調査の結果、多読実施校の自己評価は読む態度の変化や話す技能の伸張が理由として多く、読む能力そのものの伸張を理由とする評価は少なかった。多読未実施校での多読導入上の問題点として、教材不足・多読活動に割く時間の不足だけでなく、多読実施時の教師の役割についての懸念が存在していることが明らかになった。今後、多読という読みの教育方法が日本語教育において広く受け入れられるためには、多読の効果の定量的な検証と多読を実施する教師の役割の2点を明らかにする必要があることを指摘した。(2) 国際共同研究先のサイアム大学(タイ)での教育実践について、『タイ日研究ネットワークThailand研究論集』Vol.4に「プレゼンテーション授業改善のための取り組み―インプットとしての多読学習材活用の提案―」を投稿し、採択された。本稿では4技能の総合的な育成を目的としたプレゼンテーションの授業において、受講者のプレゼンテーション準備の負担軽減のため、多読学習材を素材として取り入れることを提案した。プレゼンテーション準備の時間は、授業本来の目的である発表の練習に充てられる。したがって、発表練習の回数が増えることから、人前の発表に慣れ、緊張せずに発表できるようになる、あるいは、発表のスキル(話し方・身振り・視線・発音)の練習に時間を割くことが期待できる。
3: やや遅れている
新型コロナウイルス感染拡大により、調査が当初の計画より遅れている。一方、日本国内における多読実施状況調査および日本語多読に初めて取り組んだ教員の記録の分析は進んでいるものの、全体の進捗状況としては「おおむね順調に進展している」とはいえないため、「やや遅れている」と評価した。
2023年度に3回目の日本国内の日本語学校を対象とした多読実施状況調査を行う。2019年度、2021年度、2023年度と隔年で3回の調査を行うことになる。3回の調査結果をまとめ、論文として投稿する予定である。また、日本語多読に初めて取り組んだ教員の分析を進める。分析結果を踏まえ、同様に日本語多読に初めて取り組んだ、あるいは、日本語多読の経験の浅い教員を対象としてインタビューを行い、本研究課題の主題である多読の実践を通じた日本語教師の言語教育観・言語能力観の変容を探る。
新型コロナイウイルス感染拡大が続く中、対面での調査活動が進まなかった。次年度使用額は、2023年度、再度、日本国内における多読実施状況調査を行う。また、インタビュー調査協力者への謝金、インタビューの文字化、学会発表のための旅費に充てる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)
タイ日研究ネットワークThailand研究論集
巻: 4 ページ: 1~10
外国語教育のフロンティア
巻: 6 ページ: 91~105
10.18910/91031
神戸学院大学グローバル・コミュニケーション学会紀要 = Journal of Global Communication Studies
巻: 8 ページ: 93~102
10.32129/00000258
日本語研究
巻: 42 ページ: 1~18
日本語教育研究
巻: 59 ページ: 67~84
10.21808/KJJE.59.05