研究課題/領域番号 |
19K00724
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
山本 晃彦 関西大学, 国際教育センター, 留学生別科特任常勤講師 (60781804)
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研究分担者 |
末吉 朋美 関西大学, 国際教育センター, 留学生別科特任常勤講師 (20761034) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 動機づけ / 自律的 / 自己評価 / 学習の記録 |
研究実績の概要 |
本研究は日本語学習者が自身の動機づけをどのようにコントロールしているのかを明らかにすることを目的とする。具体的には、①学習者が自身の動機づけをコントロールするためにどのように自身に働きかけているか、②学習者の自律的動機づけの構造の類型化、③教師の働きかけが学習者の自律的動機づけに与える影響、の3点に注目し、調査、検討を行った。 ①については、これまで収集した学習の記録のデータ分析から、学習者は自身に有能感や達成感といったポジティブな働きかけと、弱点や反省などネガティブな働きかけの双方をバランスよく併用している学習者が最も自律的に動機づけのコントロールを行っていることがわかった。 ②に関しては、まずは学習者が自身にどのような自己評価を行っているかを検証した。自律的動機づけに関する質問紙調査から、学習者を高自律群、自律傾向群、非自律群の3群に分けてその差異を分析したところ、高自律群は自律性に関する自己評価が高いこと、自律傾向群は実行力に関する自己評価が低いこと、非自律群は計画力に関する自己評価が低いことが明らかになった。 また、③については、教師のコメントついて半構造化インタビューを行ったところ、高自律群は学習の記録に書かれた教師のコメントを参考に学習方法を見直すなど、教師を積極的にリソースとして活用していた。学習の記録の活動については賛否両論であったが、たとえ否定派であってもどうせやるなら何かの役に立てたい、と自分なりに工夫していた。一方で非自律群は課題を提出はするものの何かに活用しようというよりも、課題だからやるとしかとらえていなかった。しかし、いずれの群も教師のコメントがないと提出しなかったと述べているように、教師のコメントを動機づけ活性化の手段として用いていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目的は、学習者の自律的動機づけの発達過程を知ることにより、学習者に適した支援を行い、円滑な授業運営を行うためのヒントとなりえることである。学習の記録のデータ分析から、学習者を自律的動機づけによって類型化していく作業が進展している。最上級クラスのみで行われている活動のため、年間に30名程度のサンプルしか収集できないことから、データをどのように蓄積していくかが課題であったが、データ収集も4年目となりようやく100例を超えるデータが蓄積された。 また本年度は新たに自律的動機づけに関する質問紙調査を行い、SPSSを用いて自律の度合いによる差異がどのように影響しているかを分析した。インタビューでは高自律群7名と非自律群2名から回答を得、文字化、分析に入っている。以上のように、データの蓄積と、アンケート及びインタビュー調査データも順調に取得できていることから当初の計画通り、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では日本語上級者クラスにおける「学習の記録」と「アンケート」の分析をもとに進めている。次年度以降(令和2年度、3年度)は、本年度(令和元年度)に得られたデータをもとに、データの信頼性を上げるため、データ収集を引き続き行い、それらを基に分析を行っていく予定である。具体的には、学習の記録の収集とその活動に関する事後アンケートおよびインタビュー、自律的動機づけに関する質問紙調査を引き続き行う。 まず、学習の記録の分析では、本年度に収集した記録の分析を進めていく。ネガティブな働きかけとポジティブな働きかけの併用の下位分類に傾向が見られるか等、より詳細ア分析を試みる。さらに、ネガティブあるいはポジティブの一方しか出現していない学習者に対する教師の働きかけが、自律的動機づけの変容を促しているか検証したい。 事後インタビューおよび事後アンケートでは半年間の教室活動の事前と事後にどのような変容が見られたかを探っていく。自律的動機づけに関する質問紙調査結果をもとに自律度の違いによっていくつかの群に分類し、群間にどのような差異が現れるかを検討する。また、属性によって差異が見られるかも今後の検討に含めていきたい。 以上の分析結果及び研究成果は、随時学会等で発表を行い、フィードバックを得ながら、研究を推進していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた学会発表が大学業務で出席できなくなり、その旅費分が余ったため、次年度使用額が生じている。 また、インタビューの文字おこしについても、データ数が少なかったたため、自分で行った。したがって、人件費を使わなかったため、次年度使用額が生じた。
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