研究課題/領域番号 |
19K00729
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
池田 庸子 茨城大学, 全学教育機構, 教授 (30288865)
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研究分担者 |
坂野 永理 岡山大学, 全学教育・学生支援機構, 特命教授 (30271406)
坂井 美恵子 大分大学, 国際教育研究推進機構, 教授 (60288868)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 日本語教育 / 多読 / 実践研究 / 初級 / 多読教材の作成 |
研究実績の概要 |
本研究では、日本語学習者及び教師の読むことに関する意識、興味、環境に関して探索的な調査を行うと同時に、多読用教材に関する分析を行う。学習者、教師、多読教材を対象とした包括的な調査・研究により、これからの読解教育に関する提言を行うことを目的とする。 2022年度は、論文3本、学会発表2件、シンポジウム2件、セミナー1件において、本研究の成果を発表した。 研究代表者は、日本で多読実践を行う日本語教師3名にインタビューを行った調査結果を分析し、多読が多様な学習者を受け入れるインクルーシブな学びとして捉えられられていることを指摘した。また、海外から研究者を招聘し、英語多読の研究者と連携してシンポジウムを開催した。研究代表者・分担者共同で、ヨーロッパ日本語教育シンポジウムにおいてオンラインで行った多読授業での新しい試みと評価に関する発表を行い、海外の研究者と広く情報交換を行った。 分担者は、在外研究で滞在したイタリアの大学において多読授業を実践し、多読の普及を図るとともに、学習者を対象に個別インタビューを行い、読み方や読書傾向について調査を実施し、その結果を報告した。また、セミナー「日本語多読授業の実践:多読授業をやってみよう」において講師を務めた。このセミナーにはイタリアのみならずヨーロッパ各国で日本語教育に従事する教員の参加があり、ヨーロッパでの多読の理解と普及に貢献した。また、別の分担者は多読のクラスで速読も行い、学習者の読む速度が有意に速くなったという結果を報告した。 研究代表者・分担者共同で研究成果を基に修正を重ねていた多読教材を出版することができた。さらに、Paul Nation& Rob Waringによる Teaching Extensive Reading in Another Languageの日本語翻訳を終え、出版準備に取り掛かっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画通りに実施した内容としては、以下が挙げられる。 1.日本語教師を対象とした質的調査:研究代表者は日本の多様な教育現場で多読授業を実践している日本語教師を対象にインタビュー調査を行い、論文「多読授業を実践する日本語教師の意識の変容-日本で教える教師の語り-」として発表した。2.代表者及び分担者は多読教材を開発し、研究を基に改定を加え当初の計画通り、出版することができた。3.研究代表者と分担者等は英語教育における多読の第一人者による書籍(Nation, I. S. P.,&Waring, R.(2020) Teaching Extensive Reading in Another Language. New York: Routledge)の翻訳をほぼ終え、出版に向けた準備を行っている。 計画以上に進展している点としては、以下が挙げられる。 1.代表者は海外の研究協力者を招聘し、研究交流を行うとともに、英語多読を実践する英語教員と連携しながらシンポジウム「第二言語習得における多読の実践と研究」を開催した。2.分担者は、在外研究で滞在したイタリアの大学において多読授業を実践し、多読の普及を図るとともに、学習者を対象に個別インタビューを行い、読み方や読書傾向について調査を行った。また、ヨーロッパの日本語教員を対象に多読セミナーを実施し、ヨーロッパでの多読の理解と普及に貢献した。3.もう一人の分担者は国際共著論文を執筆し、海外のジャーナルに発表した。 英語教員との連携やイタリアやニュージーランドの日本語教師等との連携が進み、計画以上に研究が進展したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度も継続して、以下に示した3つの研究を進めていく。 <研究1>の日本語学習者を対象とした質的調査に関しては、継続して研究代表者及び分担者の所属する大学及び協力機関で多読教材を用いた授業実践を行い、学習者にアンケートやインタビュー調査を行い、結果の分析を行う。また、対象を大学生以外にも広げ、多様な学習者や学習環境における多読の効果や影響について調査を行う。 <研究2>の多読教材の分類と分析に関しては、教材に関してより多くの学習者を対象にアンケート調査を実施する。得られたアンケート結果を分析し、さらなる多読教材の開発に向けて準備を行う。「やさにちチェッカー」や「日本語文章難易度判別システム」にかけ、文法及び語彙等の難易度の分析を行い、既に市販されている多読教材との比較を行う。 <研究3>の多読教育を実践している日本語教師を対象とした質的調査に関しては、インタビューで得られた結果を発表する。本研究で教育・研究連携が進んだイタリアやニュージーランドなどの教師とも連携を深め国際的な共同研究を目指す。 以上に加えて、研究代表者と分担者等と共に多読に関する書籍の翻訳の推敲を行い、翻訳書の出版を目指す。また、多読の実践方法や影響について地域社会に対して広く情報発信を行うことで、研究を社会に還元するとともに、新たな研究のシーズを探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年の夏にオランダのライデン大学で開催予定であったヨーロッパ日本語教育シンポジウムがコロナの影響によりオンラインで参加することとなり、旅費の支出を抑えることができた。 2023年度はインドネシアのバリ島で国際学会Extensive Reading Around the Worldが開催され、学会発表が採択されている。この学会は完全対面で開催されるため、2022年度分の旅費を2023年度使用する。
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