研究課題/領域番号 |
19K00740
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小山 悟 九州大学, 留学生センター, 准教授 (50284576)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 日本語教育 / 批判的思考 / デザイン実験 / 他者説明 |
研究実績の概要 |
本研究は、学習科学の分野で広く用いられているデザイン実験という新たな研究手法を用いて、留学生対象の日本語の授業で学生たちの批判的思考を促す方法について研究しようとするものである。先の研究(~2018年度)では「質問力の育成」をテーマに、日本人学生対象の実践と比較しながら研究を進め、その成果を授業デザインの6つの基本原則としてまとめた。それに続く本研究では「説明力の育成」をテーマに「①その説明は聞き手にどの程度理解されたのか。理解度が低い場合は何が原因か」「②その説明は話し手自身の内容理解も深めたのか。深めていない場合は何が原因か」「③その説明は話し手自身の知識構築につながる問いを引き出せたのか。引き出せていない場合は何が原因か」という3つの研究課題を設定し、研究を進めている。「説明力」に着目したのは、批判的思考力は学習した内容を無批判に受け入れるのではなく、自ら問いを立て、自己の経験や既有知識と関連づけながら多面的かつ論理的に分析し、合理的な説明を求めて思索することによって育成されるものであり(=先の研究課題)、そうして得た考えを言語化し、他者からの批判に耐え、異なる意見に触れることによって更に深まっていくものと考えるからである。 初年度(2019年度)は、申請時の計画書でも述べたとおり、前年度後期に行った予備調査の結果について分析し、学習モデルを立てることを目標とした。データの収集は、短期留学生対象の上級授業を中心に行い、比較のために日本語教員を志望する学部生対象の授業や、現職日本語教員のセミナーなどでも参加者の許可を得た上でデータの収集を行った。現在は2年目に向けてデータの分析を行っており、9月と11月の学会で結果報告ができるよう、準備を進めている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた香港での研究授業が、録音許可の手続きが間に合わず、思うようにデータを収集できなかったことを除いて、概ね順調に進んでいる(収集できなかった分は代わりの調査を行い、収集)。比較対象となる日本語母語話者のデータも予定どおり収集できており、特に大きな問題はない。8月には研究のせいか報告会を兼ねた「現職日本語教員向けセミナー」を市内の会議室で開催した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定どおり、留学生対象の日本語の授業と日本人学生対象の授業で教育実践を繰り返し(第2次デザイン実験)、初年度の結果と比較などの分析を行った上で、最終年に一定の成果を出せるよう研究を進めていく予定である。ただ、コロナウィルスの蔓延により、少なくとも前期は対面授業ができなくなり、また6月に予定していた海外での調査も延期が確定したため、思うようにデータ収集が駅ない可能性があり、強く不安を感じている。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に長野県長野市で行われる学会(日本教育工学会)に参加予定であったが、コロナウィルスの蔓延で中止となってしまった。そのため、急遽(来年度の予算で行う予定であった)データの文字起こしに使途を変更した結果、次年度使用額が生じた。
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