研究課題/領域番号 |
19K00740
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小山 悟 九州大学, 留学生センター, 准教授 (50284576)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日本語教育 / CBI / 批判的思考 |
研究実績の概要 |
2021年度は、コロナウィルス感染症の流行拡大により実施できなかった実験授業(第2回調査:当初の予定では2020年6月)を6月にオンラインで実施した。調査対象者は香港の高等教育機関で日本語を専攻する学生12名で、授業では「知識構成型ジグソー法」(三宅 2011)という協調学習の教授法を用いた。これはグループごとに別々の資料を読んだ後(エキスパート活動)、グループを組み替えて各々が読んだ資料の内容を説明し合い、教師から与えられた問いの答えを全員で考える(ジグソー活動)というものである。授業のテーマは「日本の国民食」で、「外国由来の料理が数多くある中で、なぜ一部の料理は国民食と言われるほどまで多くの人に愛されるようになったのか」を問いとした。ジグソー活動は日本語力上位群1組、中位群2組、下位群1組の4グループに分けて行い、その中で学生たちが自分の読んだ資料の内容を説明している部分を分析の対象とした。分析の結果、大半の学生が資料の内容を自分の言葉で説明しようと努力しており、母語の使用も難解な語彙の説明など必要最小限に留めていたことがわかった。また、中位群を中心に確認チェックや明確化の要求が散見されたことから、話し手の説明を正確に理解しようとする姿勢も伺えた。一方、最終日に行った内容理解テストの結果から、どのグループも自分が説明した資料よりも他者の説明を聞いた資料の内容理解度が低く、特に下位群において顕著であった。なお、これらの結果については、本年7月に開催される日本語教育学会支部集会(九州・沖縄地区)で発表し、その後実践報告論文としてまとめる計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究が予定どおり進んでいない最大の原因は、コロナウィルス感染症の流行拡大により、実験授業が思うようにできなかったことにある。筆者の研究室では、香港の日本語教育機関の協力を得て、毎年6月に「日本留学体験講座」という5日間の実験授業を行い、研究に必要なデータの収集を行っている。本研究においても、2019年6月に実施した第1回調査(対面)の結果を分析し、改善点を検討した後、2020年6月の第2回調査と2021年6月の第3回調査を通じて研究成果をまとめ、日本語教育学会や香港日本語教育研究会で報告する計画であった。しかし、第2回調査は、コロナウィルス感染症の拡大により渡航ができず、オンラインでの実施も受け入れ側の環境が整わなかったため、見送らざるを得なかった。翌年6月にようやくオンラインで実施できたものの、第1回調査とは実施方法が異なるため(対面 vs. オンライン)、実質的には第1回調査のやり直しとなってしまった。そのため、研究期間の延長を申し出た次第である。第3回調査は本年6月にオンラインで実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年6月に第3回調査をオンラインで行う方向で現在準備を進めている。当初予定していた対面調査ができなくなったことから、対面で行った第1回調査との比較が難しくなってしまったが、これから行う第3回調査の結果を(同じくオンラインで行った)第2回調査の結果と比較するとともに、過去に行った(同じ批判的思考がテーマの)質問実践(注)の調査結果との比較をするなど、様々な角度から分析していく。また、実験参加者が相手の反応をどの程度確認しながら説明していたのかを調査するため、説明活動中のモニタリング行動に関する質問紙調査(篠ヶ谷 2020)も実施する計画である。 注.「批判的思考力を育む日本語教育-学習方略研究の知見に基づいた授業の設計と実践、評価」(2016年度~2018年度 挑戦的萌芽研究 課題番号16K13244)
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの感染拡大により、香港の高等教育機関において実施する計画だった研究授業が中止(2020年度)またはオンラインでの実施(2021年度)になった。そのため、旅費(渡航・滞在費、学会出張費)、人件費(データの文字起こし作業にかかる経費)などで残額が生じた。
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