研究実績の概要 |
本研究は、小学校教員の英語によるWillingness to Communicate(以下、WTC)を調査し、今後の研修に役立てることをねらいとした。成果を2つ述べる。 1つは、小学校教員のWTCの傾向が確認できたことである。L2WTCの平均は33.0、L1WTCは54.1であった。これは、Yashima(1998)が行った日本人大学生への調査(L2WTC; 32.9, L1WTC; 54.6)と同等の数値であることから日本人の平均的なWTCであると考えられる。 2つ目は、WTCの関連要因である。L2WTCに最も強い相関を示したのは、国際的指向性であった(r =361, p< .01)。国際的指向性の高まりがコミュニケーションを図ろうとする意欲と関連があるということが示された。また、L1WTCとL2WTCの間にも中程度の相関がみられ(r =.588, p< .01)、日本語でコミュニケーションを図ろうとする気持ちの強い教師は、英語でもコミュニケーションを図ろうとする気持ちが強いことが確認された。さらに、英語能力の認知とコミュニケーション不安の間には、負の相関がみられた(r = -. 586, p<.01)。小学校教員にとっても、英語力を高めることがコミュニケーションを図ろうとする際の不安を軽減し、自信につなげていくものと考える。 考察として2つ挙げる。1つは、他国に比べてそもそもL1のWTCの数値が低いことがある。その原因を考えると、元々高コンテクスト社会である日本にとって、言葉を詳細に述べずとも相手を理解しようとする気持ちが働き、言葉少なに語る文化が影響するのではないかということである。もう1つは、L1WTCとL2WTCの20ポイントの差はどこから生じているのかということである。その答えとして、WTCに強い相関を見せた国際的指向性と、英語能力の認知があると考える。
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