研究課題/領域番号 |
19K00773
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
鈴木 夏代 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (50836319)
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研究分担者 |
原田 哲男 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60208676)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Tasks through ZOOM / Online interaction / Self-regulated learner / Flipped-classroom |
研究実績の概要 |
2020年度は、コロナ感染のために、緊急事態宣言が長く実施される中、初年度に実施した全国から抽出した中学、高等学校での「タスクを活用した英語授業実践のアンケート調査」に基づいた訪問、観察、インタビュー、データ取得などの予定も延期せざるを得なくなった。また、日本で得られた研究、議論の成果を世界応用言語学会、英国応用言語学会で発表する予定が延期された。 その一方で、移動や対面活動の制限を余儀なくされた中で、リアルタイム配信のオンライン(ZOOM)授業が大学を中心に広く行われたことから、オンラインで行われる英語授業について、対面方式の授業と遜色があるのか、あるいは利点があるのか、その効果的な指導について、早急に調べる必要性が生じた。中でも、どのような内容のタスクを配置し、タスクがどう学習者の協働学習を促す役割も持つのか、ひいては、学習者がタスクを遂行する上で、どのようなアドバイスを教員に求めるのか、など対面方式の授業とは異なる方法で、効果的なタスクを活用した言語学習についての研究を実施することにした。 コロナ感染による行動自粛制限が続く環境下では、対面教室に集まる人数を減らすものの、マスクをつけたままの学生同士の会話は、どうしても声が通らず、聞きづらく、逆に至近距離での会話になりがちである。一方、聴く、話す技能は、むしろオンライン上であれば、感染リスクの問題に限らず、音声調節や画面共有などの機能を駆使しながらスムーズなコミュニケーションを行うことが可能である。従って、今年度は、オンライン授業に焦点をあて、その中での4技能タスクを用いた授業研究を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の秋学期(10月)からデータ収集が行えるよう、春学期が終わる頃から共同研究者と打ち合わせを数回オンライン上で行った。観察実験は、リアルタイム配信のZOOMでの外国人講師による英語授業(主に4技能向上を目的にした授業)を3クラス抽出し、学習者が対面の教室とは異なる密室の空間(ブレークアウトルーム)の中で、学習者同士がどのように協働学習を構築するかについて、会話音声のデータを録音し、授業全体の観察と含めて調べた。 集められた音声は文字化し、現在、それらのデータからdiscourse分析、オンライン上で調べ学習が容易になったことから、a self-regulated learnerの度合い、scaffolding, 母語を使用する役割などについて、分析作業を進めている。 リアルタイム配信のオンライン授業では、テクノロジーの利便性からその場で聴く、話すことが身近になり、時間を要する、読む、書くなどの技能は、他の学習者と聴く、話すための準備や発展課題として扱えられ、反転授業(Flipped-classroom)の実現が容易になった。学生が集まる授業の中では、身のある協働学習が求められ、そのためのタスクの役割が一層重要になってくることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後、リアルタイム配信授業による外国語科目の利点が見直されることも見据え、引き続き、オンライン授業を通した4技能向上のためのタスクを活用した研究を続ける必要性があるとみられる。 まず2020年度は、コロナ禍での新しい授業方法における実態調査という位置づけから本研究を行ったが、2021年度は、オンライン授業を同じく実施している海外の事例などと照らすために、延期されたオンラインでの国際学会(英国応用言語学会)で日本で行われたタスクを活用した外国語授業の研究を紹介することにする。ここでの議論を踏まえて、海外からの(オンラインによる)招聘講義を次年度に向けて準備する。また、日本でも研究会(ワークショップなど)を秋以降に実施する予定である。研究の知見を踏まえた出版活動も行うことで、広く周知を図り、今後の活発な議論へつなげる予定である。情勢次第では、更に今後は、学校訪問と観察、意見交換、などの機会が再開できればと思う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染予防のための緊急事態宣言の発令により、移動制限や対面でのミーティングが不可能となり、当初予定していたスケジュールが実施できなかった。本年度は、オンライン授業におけるタスク活用についての調査研究を深めると同時に、研究分析ソフトの購入、謝金による分析補助のための費用、パブリケーションに関する費用、オンラインによる国内外の研究者の招聘費用、などを予定している。
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