研究課題/領域番号 |
19K00781
|
研究機関 | 岐阜市立女子短期大学 |
研究代表者 |
小島 ますみ 岐阜市立女子短期大学, その他部局等, 准教授 (40600549)
|
研究分担者 |
金田 拓 帝京科学大学, 教育人間科学部, 講師 (10759905)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | ライティング力 / メタ分析 / ライティング指導 / 流暢性 / 正確性 / 統語的複雑性 / 語彙的複雑性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的の1つは、第二言語ライティング力と産出されるテクストの言語的特徴がどの程度関係があるかについて、メタ分析により過去の研究成果を統合し、ライティング力とどのような言語的特徴がどの程度連関するのか、また結果に影響を与える変数は何か明らかにすることである。本研究結果は、ライティングの指導や評価でどのような点を重視するべきか、また教師や研究者がライティングの発達指標として言語指標を使用する際に、どの指標を選択したらいいかについて知見を得ることである。2019年度の研究実績概要は、以下である。 これまで収集した論文140本について、コーディングを行った。これらの文献は、第二言語ライティング力と産出されたテクストにおけるさまざまな言語的特徴との相関関係について調査したものである。結果に影響を与える可能性のある調整変数(学習者の母語、第二言語、年齢、習熟度、学習環境、ライティング・タスク)や使用された言語指標の種類、ライティング評価の種類、相関の大きさについて、コーディングを行った。これらの文献の中から、第二言語英語、言語的特徴として特に流暢性、複雑性、正確性に焦点を当て、52本の論文を統合しメタ分析を行った。結果より、流暢性のライティング予測力が最も高く、強い効果が見られた。正確性と語彙的複雑性では、中程度の効果が見られた。統語的複雑性では、微弱な効果しか見られなかった。調整変数分析の結果では、どの変数も有意ではなかった。これらの結果より、ライティング評価者がテクストの言語的な特徴の中でもっとも重視するのは流暢性であり,続いて言語的な正確性と語彙的複雑性であると言える。ライティング指導においても、言語的な複雑性や正確性の指導にとどまらず、英語学習者の流暢性を伸ばす指導にまで踏み込む必要があることが示唆された。これらの結果について、ひつじ書房から出版予定の共著書に寄稿した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の研究実施計画は、これまで収集した論文140本のメタ分析を行うことであったが、一部の分析しか行えなかった。この一因として、メタ分析の対象文献の範囲が広がり、テクストの言語的特性ばかりではなく、第二言語学習者の持つ言語知識(語彙や文法知識など)や、ストラテジー、動機付けといった認知的側面とライティング力の関係も含めたメタ分析を行うべく、2018年度に収集していたデータのコーディングを行ったことがあげられる。今後はこれらの文献を含めてメタ分析を行うことで、ライティング力がより総合的に理解できるとともに、ライティング指導でより力をいれるべき点が分かるため、教育上有益であると考えている。ただし、第二言語英語、言語的特徴として特に流暢性、複雑性、正確性に焦点を当て、52本の論文を統合しメタ分析を行った結果について、ひつじ書房から出版予定の共著書に寄稿することができた。また、これまでの研究成果をまとめた別の共著書も出版できたことから、おおむね順調であると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策は、主に以下である。1) ライティングにおける言語的特徴とライティング力の相関関係についてメタ分析を行い、論文にまとめる。2) ライティング力の構成要素とされる言語知識や認知的側面とライティング力の相関関係についてメタ分析を行い、論文にまとめる。3) 1のメタ分析について、特に統語的複雑性と語彙的複雑性に焦点を当て、指標の種類により結果がどのように異なるか、またどのような変数が結果に影響を与えるかを解明するべく、より詳細な分析を行う。4) 平成27~30年度に科学研究費の助成を受けて収集した230人分のデータを使用し、統語的複雑性指標や語彙的複雑性指標の妥当性検証を行う。 1と2について、既に文献のコーディングが終わっており、出版社との共著出版契約もできている。3について、1のデータを指標で分類し、より詳細に分析する。4について、英作文は電子化済みであり、4人の研究者によるライティング評価も付与している。英作文データの一部では、いくつかの言語指標も算出済みで、統語的複雑性指標の妥当性検証などいくつかの研究発表を行っている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、新型コロナウイルスの影響で、予定していた研究大会が開催されず研究発表がキャンセルになった。そのことで、予定していた旅費が執行できなかった。また、論文の執筆が遅れたため、予定していた校閲費が執行できなかった。本年度は、2本のメタ分析について論文化するため、校閲費が必要である。また、国内の学会や国際学会で研究成果の発表を行うため旅費が必要である。その他、図書等の物品の購入を予定している。前年度の残額と今年度の配分額を合わせ、効率的に研究費を執行する。
|