研究課題/領域番号 |
19K00783
|
研究機関 | サレジオ工業高等専門学校 |
研究代表者 |
真島 顕子 (大野顕子) サレジオ工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90455121)
|
研究分担者 |
大墨 礼子 関東学院大学, 理工学部, 准教授 (40712609)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 英語教育 / 教材開発 / 教材媒体 |
研究実績の概要 |
本研究は、現在使用されている教材媒体(紙、パソコン、電子パッド等)に対する学習者の認識差を調査し、高専生向けの授業内外における場面別に効果的な学習ツールを選定し、選定された学習ツールを組み込んだ内容言語統合型学習(CLIL)プログラムを開発することを目的とする。 初年度である2019年度は、学習場面ごとの教材効果を理解すべく、1年間の講座を4期に分け、授業構成は同じでありながら、それぞれの学期で使用媒体に変化を与えて授業を進め、それぞれの学期ごとにアンケートを実施して学習実感調査を行った。また、学習過程や着目点などを調査すべく、視線検出システムを用いて学習者の視線調査をするための準備を行った。授業外でも使用できるオリジナルのLMSシステムも開発した。4期で変化をつけて授業を進め、学習者はそれぞれの変化を楽しんでいるように見えた。その効果があってか、学年末の学習実感についての自己評価は高かった。 ICT教材を使用することによって学習者のペースで個別対応できるため、多くの問題に効率的に取り組ませることができた。特に取り組むペースに大きく差が出るクラスにおいては有効である。履修者が普段レポート等でパソコンに慣れていたため、ライティング課題のやり取りでは特に好評であった。また、教員の情報整理や学生との確認作業が即時にでき、物理的な紛失もないため、教員の負担が軽減された。WebClassのようなLMSシステムは教員が必要な時に設定に変更を加えることができるので、既存のオンライン教材を提供するより柔軟に教員のニーズに合わせて使用することができる。しかし、ICT機器は環境に大きく左右されるため、学校によって導入格差が生じてしまうことは当然であるように感じた。また、復習という観点からすると、紙媒体で教材がある方が勉強量を可視化できるので、ゴールが見えやすくいいと感じる学生が多かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画の通り、以下の3点を実行したため、おおむね順調であると考える。 ①英語エッセイライティングの授業で、1年間の授業を4期に分け、授業構成は同じでありながら、それぞれの区分で使用媒体に変化を与え、授業を進めた。具体的には、1期目は印刷されたワークシート(紙)を、2期目はパソコンを、3期目は電子パット(iPad mini)を利用しながら授業を進め、最後の4期目にパソコンとワークシートを併用し、それぞれの学期ごとにアンケートを実施して学習実感調査を行った。最終的には、授業はエッセイライティングを目的とした他者とのディスカッションの場とし、授業外ではICT教材を使用し、英語基礎力や情報収集能力をつけるようコースデザインを行う予定である。2019年度は教材媒体の教材効果を調査すべく、すべての媒体を授業内で使用し、学生の学習態度を調査した。学習者による学年末の学習実感自己評価は、概ね好評であった。 ②授業外で使用するICT教材として、初年度は授業外学習で使用する機材の互換性を考慮し、オンラインで使用できるLMSシステムの構築を行った。英語エッセイライティングの授業であることから、エッセイ原稿提出及び評価に特化したシステムを制作した。既存のLMSシステムとしてはWebClassを、オンライン教材としてはOxford出版社が提供するオンライン教材も同時に活用し、比較調査も行った。LMSシステムは、履修者が操作性になじみのあるアプリで活用できるよう制作準備も進めた。 ③視線検出システムを用いた調査は、研究を進める中で想定していた以上に実験の環境設定を慎重に行う必要が分かり、先行研究の調査に時間がかかってしまった。2019年度は機材設定と予備実験を行い、紙媒体とパソコン教材の視線検出が可能であることを確認するにとどまった。従って、実験調査は2020年度に実施することとした。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度は新型コロナウィルス感染拡大防止の影響で遠隔授業開始を余儀なくされ、オンライン教材の需要が急速に高まった。昨年度実施した計画は全て対面授業が基本であり、その上で教材をどのように活用すべきか、という問題に取り組んでいたが、今年度は対面指導が不可能な環境での遠隔指導においてどのようにどんな教材を活用するか、という問題に取り組むこととなった。また、遠隔授業においては、方法によっては個人対応が増え、学習がスムーズに進まず、教員と学生双方の負担が増加している例も現在までに報告されている。遠隔従業下における学習効果を引き出す教材使用方法についても引き続き検討したい。 計画している内容言語統合型学習(CLIL)プログラムにおいては、授業内では他者とのコミュニケーションを中心に指導を行い、文法や語彙の学習は授業外にICT教材を用いて行うことを予定していたが、前提条件となる対面授業が実施できない状況となってしまった。従って、予定していたアプリ制作を、遠隔でディスカッション等の活動を行うことができるよう仕様を変更し、遠隔でも効果的なディスカッションができるよう準備を進めることとした。2019年度に制作したLMSシステムも継続して使用し、改良を重ねる。また、視線検出システムによる調査は、対面授業が再開され次第速やかに実施し、結果を得る。
|
次年度使用額が生じた理由 |
アプリ制作のため、クラウドサーバー料金とアプリ開発費用が必要となる。また、教材開発や理論研究のための図書費や、論文投稿料、視線検出システムを用いた実験の謝金も、当初の計画通り使用する予定である。今年度は学会開催が危ぶまれているが、秋以降の開催を予定している学会について、参加を計画している。
|