本研究では、シャドーイング教材の難易度の要因の一つであるモデル音声(合成音声を利用)の再生速度をどのような方法で調整することが有効であるかを実証的に検証した。特に、従来の手動による再生速度変更に加えて、音声認識を活用した方法とその効果について検証した。 最終年度は、まず、前年度に行った再生速度変更ログの分析で得られた知見をもとに、タスク種類・練習回に応じて速度が事前設定されるグループを追加し、スマホアプリを用いて大学生に2週間にわたってシャドーイング練習をしてもらい、データ収集を行った。 研究期間全体を通じて最終的に、1)再生速度が一貫して同じグループ、2)再生速度を自分自身で変更できるグループ、3)再生速度が音声認識によるパフォーマンス評価によって自動変更されるグループ①、4)再生速度が音声認識によるパフォーマンス評価によって自動変更されるグループ②、5)再生速度がタスク・練習回毎に変更されるグループ、におけるデータを収集した。事前・事後テストのスコアを分析した結果、スピーキングテストについては全体としてスコアが伸びていたが、グループ間で有意な差がみられなかった。一方、リスニングテストについては、2の速度自己変更可能グループと3の音声認識による速度自動変更グループにおいて有意なスコアの伸びがあった。 本研究では、シャドーイングにおいてモデル音声の再生速度を練習中に随時変更する(できる)ことが、特にリスニング力の向上に有効であることが示されたとともに、その変更方法については、自分自身で変更するといった従来の方法のほか、音声認識を利用したシャドーイングパフォーマンス評価に基づく自動調整といった方法も有効であることが示された。本結果は、今後のシャドーイング練習での実践やシャドーイングアプリへの応用につながると考えられる。
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