研究課題/領域番号 |
19K00789
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
藤濤 文子 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (40199352)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スコポス理論 / 機能主義的翻訳研究 |
研究実績の概要 |
1970年代に翻訳研究が成立して以降、様々な研究アプローチが提案されてきたが、本研究は1978年にドイツで提唱されたスコポス理論に焦点をあてて、その歴史的意義と現状及び将来に向けての展開の有用性について検討することを目指したものである。スコポス理論の基礎から応用に至るまでを視野に入れて、①歴史的意義の確認と整理、②現在のドイツ語圏における定着現状の調査、③将来に向けての日本における有用性の可能性、という3つの観点で明らかにしようと計画を立てている。 このうち、①と③の一部については、文献の収集を進めつつ、その精査と考察検討をおこなっているところである。スコポス理論の特徴と歴史的意義を整理し、今後の可能性についての考えをまとめたものの一つを、「スコポスを再考する:再文脈化、あるいは『翻訳をデザインする』ということ」と題した学会での招待講演で披露した。さらに、スコポス理論の強みのひとつとされるマルチメディア翻訳については特に注目して文献の収集を進めた。 ②については、コロナ禍のためにドイツ語圏での現地調査ができなかったため思うようには進んでいないが、図書館を訪問して調べる予定だった博士論文と修士論文については、インターネットで閲覧可能なものについて検索して収集を進めているところである。そのうち、ウィーン大学の修士論文については、スコポス理論の枠組みを使った論文指導がなされていることが確認できている。とりわけ映像作品や歌などのマルチメディア翻訳に関するものを精読したが、それらの指導教員がMary Snell-HornbyやKlaus Kaindlなどの著名な翻訳理論研究者であることも確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ドイツ語圏の大学を対象とした調査を計画していたが、コロナ禍のため実行できず、インターネットで入手可能な資料の調査に切り替えたため、計画通りに進捗しているとは言い難い。
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今後の研究の推進方策 |
スコポス理論の①歴史的意義の確認と整理、②現在のドイツ語圏における定着現状の調査、③将来に向けての日本における有用性の可能性、という3つの観点で研究をさらに進めていくが、そのうち①と③については、招待講演を行った内容をさらに発展させ、文献調査の成果を盛り込んで幾つかの論文としてまとめる予定である。さらに、スコポス理論の主たる分野のひとつである異文化要素とマルチメディア翻訳へのスコポス理論の有用性について研究を進める。②については、実施年度をずらしてでもドイツ語圏での現地調査の可能性を探りたいが、どうしても難しいようなら、インタビュー調査に代わる方法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のためにドイツ語圏での現地調査の費用が発生しなかったが、その代替としてインターネットでの検索作業の補助として大学院生を雇用したが、差額が生じた。インターネットでは検索できないものが多いため、次年度はドイツ語圏での現地調査を計画している。
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