研究課題/領域番号 |
19K00792
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
江口 清子 宮崎大学, 国際連携センター, 講師 (90812537)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ベンガル語 / 移動表現 / 類型論 / 中間言語 / 外国語教育 / 日本語教育 / 言語産出実験 |
研究実績の概要 |
本研究は、ベンガル語話者の言語表現を主な対象とし、第二言語習得における学習者の中間言語的特徴とその変容を明らかにすることを目的とするものである。対象者の母語(ベンガル語)と学習言語(日本語および英語)において、映像を用いた言語実験等の調査を行い、認知言語学的枠組みを用いて考察し、ベンガル語話者の事態認知と言語化の関連性を明らかにする。そのため、初年度は、ベンガル語の全体像を把握するべく、複数の構文や表現に関して聞き取り調査を行った。また、次年度以降で調査実施を予定している言語産出実験にかかる映像やアンケートの準備を行い、また一部で調査を開始した。詳細は以下の通り。 1)ベンガル語話者の事態認知と言語化の関連性を明らかにするために、まず、ベンガル語に関連する文献資料の収集を行った。 2) ベンガル語の移動表現、および状態変化に関わる表現について聞き取り調査を行い、これらに基づき記述を行った。今後、先行研究で、移動表現に関して、他の言語の実験に使用した映像を用い、ベンガル語話者による言語産出実験を行う予定であり、その準備段階として、実験映像のベンガル語版への翻訳を行った。 3) 世界の言語の形態的関連のある有対動詞を収集した地理類型論的なデータベースである、国立国語研究所の『使役交替言語地図』 (The World Atlas of Transitivity Pairs (WATP)) (http://watp.ninjal.ac.jp)に、ベンガル語における形態的関連のある有対動詞のデータを提供した。 4) ベンガル語の自他動詞構文に関して、先行研究で他の言語の調査に使用したアンケートを用い、ベンガル語話者による調査を行う予定であり、その準備段階として、アンケートのベンガル語版への翻訳を行った。さらに、アンケートのweb化を行い、web上でアンケート調査を一部実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究が明らかにしようとしているのは、a) ベンガル語話者の事態認知と言語化の関連性を明らかにする、b) 学習者言語の中間言語的特徴について解明する、c) 学習者の特性に合った教材の原型を作成する、の3点であり、初年度は 1) にかかる作業に注力した。 当初の計画で予定していた、a) の具体的な内容は、1) ベンガル語の移動表現に関連する文献資料を収集すると同時に、移動表現に関わる語彙項目の調査を行い、これらに基づき、ベンガル語の移動表現について記述する、2) 先行研究で、他の言語の実験に使用した映像を用い、ベンガル語話者による言語産出実験(言語産出実験[1])を行う、3) 2) の結果に基づき、より詳細に調査すべき対象を選定し、実験計画を具体化、実験映像の作成を行い、同様の手順で言語産出実験(言語産出実験[2])を行う、の3点である。このうち、初年度に実施を予定していたものは、1)および2)であるが、現状は、1) が終了し、2) についても、 言語産出実験の準備まで整った段階にある。 一方で、当初の計画にはなかったものの、ベンガル語の全体像を把握するのに、有益と思われるため、新たに計画に加え実施した項目もある。状態変化に関わる表現についての聞き取り調査、国立国語研究所の『使役交替言語地図』への、ベンガル語における形態的関連のある有対動詞のデータ提供、自他動詞構文に関する既存の調査用アンケートのベンガル語版への翻訳および、アンケートのweb化、web上でアンケート調査の一部実施などである。詳細は「研究実績の概要」を参照されたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究が明らかにしようとしている、a) ベンガル語話者の事態認知と言語化の関連性を明らかにする、b) 学習者言語の中間言語的特徴について解明する、c) 学習者の特性に合った教材の原型を作成する、の3点のうち、2年目に予定していたのは、初年度に得られた成果発表であったが、コロナウイルス感染防止対策関連で、多くの学会の開催は中止または延期となっているため、当初の予定を変更し、2年目である本年度も、初年度に続き、データ収集や、分析に注力し、研究の質をより高めるべく努める。 初年度に実施を予定していたもので、終了していない言語産出実験[1]については、当面、対面での実施が困難となったため、当初の予定を変更し、オンラインでも実施可能な形態に作り替える必要がある。その上で、本年度は言語産出実験[1]の実施、分析を行い、来年度にできるだけ多くの成果発表が行えるよう、考察を進める。また、当初の計画にはなかったものの、新たに計画に加え実施した項目のうち、自他動詞構文に関するンケート調査の残りを実施し、来年度に成果発表が行えるよう、分析を行い、考察を進める。なお、当初2年目には、言語産出実験[1]の結果に基づき、より詳細に調査すべき対象を選定し、実験計画を具体化し、言語産出実験[2]の実験映像の作成および実施を予定していたが、なお、言語産出実験[1]について、既に他の言語で行われている先行研究で、この実験のみから得られるデータは、質・量ともに十分なものであり、かつ、データの分析には非常に時間も労力もかかるため、実施しない可能性についても検討する必要がある。 3年目には、当初の計画通り、各研究の部分的な成果発表を行うとともに、それぞれの成果に基づき、語学教材の原型を作成することを目指す。
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