研究課題/領域番号 |
19K00792
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
江口 清子 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 講師 (90812537)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ベンガル語 / 移動表現 / 類型論 / 言語産出実験 |
研究実績の概要 |
本研究は、ベンガル語話者の言語表現を主な対象とし、第二言語習得における学習者の中間言語的特徴とその変容を明らかにすることを目的とするものである。対象者の母語(ベンガル語)と学習言語(日本語および英語)において、映像を用いた言語実験等の調査を行い、認知言語学的枠組みを用いて考察し、ベンガル語話者の事態認知と言語化の関連性を明らかにする予定である。 コロナ禍で3年目までは思うように調査が進められなかったが、4年目にオンラインでの実験調査により、移動表現に関するベンガル語母語話者15名分のデータを得ることができ、その結果に基づき、移動表現におけるベンガル語の類型的特徴について、その一端を明らかにした。移動表現研究でとりわけ重要なタルミー類型論 (Talmy 1985, 1991, 2000) については、しばしば、様態動詞がさまざまな経路表現と共起する言語(=様態言語)と、それが不可能な言語(=経路言語)の類型などとして、その一部を中心的主張として取り上げて議論される(Levin & Rappaport Hovav 1995他)。しかし本研究では、ベンガル語が経路主要部外表示型言語でありながら、様態が主要部で表示される割合が非常に低いことを明らかにし、主要部で用いられる動詞の種類は類型とは独立して論じられるべきであることを示した。さらに、主要部で様態動詞が用いられた場合の着点句の使用も限定的であることから、これらの共起制限についても、類型とは独立して扱うべき現象であると考えられる。上述の結果は自立移動表現についてのみを分析したものであるため、今後、使役移動表現、視覚移動表現の分析も加えて、言語内の一貫性についても考察を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、初年度に、ベンガル語の全体像を把握するべく、複数の構文や表現に関して聞き取り調査を行い、2年目以降で調査実施を予定していたが、コロナ禍の影響で調査の実施は非常に難しく、2年目、3年目は主にリモートでの調査環境整備に費やした。 4年目もコロナ禍の状況は大きく回復することはなかったものの、当初の予定を大きく変更し、オンラインでの研究調査の手筈を整え、日本国内で、実験に係る人材を確保し、実験を行い、結果の一部について分析し、その成果を、日本言語学会で口頭にて発表した。 しかし、本研究は、ベンガル語話者の言語表現を主な対象とし、第二言語習得における学習者の中間言語的特徴とその変容を明らかにすることを目的とするものであるにも関わらず、未だ学習者のデータを扱う機会が得られていないため、研究期間の延長を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
5年目に入り、コロナ禍の状況が落ち着きつつあるため、今夏には調査の目的でバングラデシュに渡航し、ベンガル語母語話者の日本語、および英語学習者のデータを収集する予定である。収集次第、すぐに分析に取りかかり、結果を学会等で発表する。 ベンガル語母語話者のデータについて、昨年度学会発表を行ったものは、現在論文化を進めている。また、学会発表時には扱わなかった分析結果についても、学会等での発表を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で現地調査に行けなかったことが最大の理由である。次年度は状況も落ち着いていることから、研究協力者を伴って現地調査を行う予定であり、残額の大半を旅費として使用する見込みである。
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