研究課題/領域番号 |
19K00807
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研究機関 | 神田外語大学 |
研究代表者 |
拝野 寿美子 神田外語大学, 外国語学部, 准教授 (30747001)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 継承ポルトガル語教育 / 異文化間能力 / 在日ブラジル人 |
研究実績の概要 |
2021年度は、数度に及ぶ新型コロナ感染拡大により、国内および海外調査を十分に実施することができなかった。そのため、海外のオンラインシンポジウムへの参加により継承ポルトガル語教育の最新事情の把握に努めた。参加を通し、特にコロナ禍においても欧州における継承ポルトガル語教育研究が活発に実施されていることが確認できた。また、2020年に実施した国内調査結果のとりまとめと考察を国内の学会で発表したり、論文にまとめて投稿した。マイノリティの異文化間能力を明らかにするという研究目的に向けて、当事者に最も重要と考えられているのは自尊心であり、マジョリティの異文化間能力形成モデルで示されるものよりも、その重要性が大きいことを明らかにすることができた。投稿論文で図示を試み、マイノリティの異文化間能力形成のモデル化を開始した。さらに、これまでの数年にわたる調査結果の考察から、明治期以降海外にわたった日本人移民による日本語学校や、現代の駐在員子弟向けの補習授業校の教育役割が、時空間を超えたマイノリティ教育という普遍性を持つこと、そうした教育を受けた幼少期の経験が、継承語教師になる契機にもなっていることがわかり、招聘された講演会などを通して研究成果として公開した。なお、招聘された後援会は14.備考にある通りである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度に実施した調査の成果を口頭発表や論文でまとめることができたことで、研究課題である、継承語教育における異文化間能力の形成に向けた教育者の姿勢を整理することができた。教育者が考える、マイノリティの子どもたちに最も重要な異文化間能力は「自尊心」であり、継承語教育がこの自尊心を持たせるためにどのような貢献ができるのか、今後さらに検討するべきであることが明らかとなった。また、2019年度の海外調査、2020年度の国内調査をつなぎ合わせてまとめていくなかで、時空間を超えた移民の言語文化継承の意義や現代的価値を今後の研究テーマとして抽出し、2022年度からの新たな科研費申請につなげることもできた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度で終了する予定であったが、新型コロナ感染拡大により海外調査や研究成果の発信を進めることができなかったため、2022年度も研究を継続することとした。継承語教育を通して形成したい、マイノリティの子どもたちの異文化間能力とは何か、その形成にあたってどのような手法や教材が使われているのかを、残された1年で明らかにし、最終的な成果のとりまとめを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナ感染拡大によって所属大学で海外出張が原則的に禁止されたことにより、海外調査および海外における研究成果発信が不可能となったことにある。2022年度は禁止措置が緩和されているので、しかるべき感染対策をしたうえで、残された国内・海外調査に、この額を充当していく。
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備考 |
次の講演会で研究成果を公開。 1「南米の日系人の来日と定住:「日系ブラジル人」と「教育」をキーワードに考察する」(JICA緒方研究所・JICA横浜連続講演『歴史から「他者」を理解する』(2022年1月18日))、 2「日本における継承語教育の意義を考える:在日ブラジル人の事例を中心に」(筑波大学フォーラム『外国にルーツを持つ子どもの言語環境とコミュニケーション』(2022年2月24日))
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