研究実績の概要 |
本研究の目的は、小学生の英語の文構造に関する知識について、縦断的調査に基づいて明らかにすることである。小学生が(無意識のうちに)身に付けている文法知識を測定する方法としての模倣発話タスクの妥当性を検証するとともに、結果に影響を与える要因や関連する言語知識の発達についても調査する。2022年度までに公立小学校の4年生から5年生(A群)、5年生から6年生(B群)の計約170名を対象に、模倣発話タスク、文法性判断課題、メタ言語知識課題、語彙サイズ、ディジットスパンタスク、スピーキングタスク、英単語認知課題を実施した。その結果、主に次の点が明らかになった。(1)模倣発話タスクや文法性判断課題の結果には、統語知識ではなく語の線形順序や語彙的な知識が反映されている。(2)小学生の英語の文構造に関する知識を測定する1つの方法として、模倣発話タスクの妥当性が確認された。名詞は単体でも記憶されやすいが動詞は句・連語の中で記憶されやすい。(3)文構造に関する知識や受容語彙サイズは、学年とともに着実に伸びている。特に文字による英単語認知は6年生での伸びが大きい。(4)一方、即興性が求められる話すタスクのパーフォーマンスは、6年生での伸びがあまり見られなかった。 最終年度の2023年度には、模倣発話タスクが何を測定しているかという研究課題に対して、前年度までに収集した小学4・5年生の音韻的査読記憶、文法知識、語彙知識のスコアを変数として混合効果モデルで分析した。その結果、個々の学習者の音韻的作動記憶を考慮しても、模倣発話スコアは文法知識と語彙知識によって説明されることが明らかになった。この結果は、A群とB群の縦断データにおいても類似した傾向であった。以上の研究成果を国際学会 (EuroSLA32, JSLS2023)にて発表した。
|