申請者は、視覚障害者の英語学習には、一般的な「物理的」情報補償だけでは不十分であることに気づいた。平成25年度の挑戦的萌芽研究において、「視覚障害者対応の『情報補償コンテンツ』型e-learningシステム」(以下「前研究」)を開発し、教材構成にも情報補償機能を設けることの必要性を発案した。前研究で学習した新入生25名(視覚障害者)の7割超から、使用感について肯定的コメントが得られ、7割超の学生に能動性の向上がみられ、中位以下学力層の約3割に短期間で成績向上がみられた。このように、前研究での教育効果が確認できた。 一方で、能動性の低下に直結する問題点もいくつか明らかになった。「音声読み上げソフトが読まない半角スペースの存在に気づかず、半角を空けずに記述解答したため、文意を正しく捉えているのに誤答となり能動性が下がった」等である。よって、音声読み上げ対応しない要素を全排除する等の改良を行った。また、2016年からの新形式TOEICに対応した問題もくわえた。 この「改良型情報補償コンテンツ」型e-learning教材での学習者からのフィードバックを分析したところ、前研究より、質的・量的に教育効果が上がったことが確認された。また、自己効力感や能動性の向上、自分に合う学習媒体の不在によって生じていた不安感の払拭等、教育療法的効果も確認できた。 前研究に引き続いた本研究により、「情報補償コンテンツ」型e-learning教材の最適な形態を確立できつつあることが分かってきている。今後、更なる問題点を抽出し改良をくわえ、視覚障害学生のニーズに応えた新教材も作成し、引き続き、教育効果測定→学生からのフィードバック、成績変化による質的/量的分析→改善→学習者への提供→学生からのフィードバック→教育効果測定、のいわばPDCAサイクルを構築していき、視覚障害学生のさらなる英語学習環境向上へ寄与したい。
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