研究課題/領域番号 |
19K00827
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
篠塚 麻衣子 首都大学東京, 人文科学研究科, 客員研究員 (90782805)
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研究分担者 |
神田 明延 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (10234155)
藤本 かおる 武蔵野大学, グローバル学部, 准教授 (20781355)
湯山 トミ子 首都大学東京, 人文科学研究科, 客員教授 (60230629)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 外国語教育 / 中国語教育 / 遠隔交流 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1.遠隔交流の学習者の学習意欲・動機づけと習得度への影響を測定し、 2.遠隔交流学習の学習成果の評価・確認方法を創出し、3.一般化可能な教授モデルを研 究、創出することにある。研究初年度は、ID理論、第二言語習得理論、動機づけに関する理論を広く学び適切な授業設計を行ったうえで、大学生初修中国語学習者を対象に、母語話者との遠隔交流を含んだ複数回にわたる教育実験と、実験協力者に対し習得度・学習意欲・動機づけに関する調査を行う計画であった。初年度である2019年度は、①研究の基盤となる理論研究、②理論を援用した授業設計、③設計授業の担当授業での実施、④データ収集の4点を中心に研究活動を行った。教育実験として実験群と統制群を設けた実験授業を行えなかったものの、研究代表者が担当する授業で①②③を実施したことで、先に述べた研究目的の内、1と3に対応する研究活動を推進した。②③の具体的内容としては、ID理論の内、Gangeの9教授事象、KellerのARCSモデルを援用し、約40名の中国語初修者を対象に遠隔交流を組み込んだ授業として一年間実施した。初年度初修外国語教育において、ID理論に則った遠隔交流を含む授業設計は創造性の高い成果である。④では、Deci&Ryanの自己決定理論、Atkinson及びEccles&Wegfieldの期待×価値理論に基づく尺度を用いて学習意欲について、授業設計に対する評価としてKellerの科目の興味度調査(CIS)を使用してデータを収集した。調査は2019年4月から2020年1月まで計5回にわたり継続的に行った。従来の授業法との習得度を比較する学習習熟度に関するデータも年間4回にわたり収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、1.遠隔交流の学習者の学習意欲・動機づけと習得度への影響を測定し、 2.遠隔交流学習の学習成果の評価・確認方法を創出し、3.一般化可能な教授モデルを研 究、創出することにある。これら3つの目的のうち、1と3については、おおむね当初予定していた通りに研究が進展している。2については、2020年度と2021年度に研究を進展させたいと考えている。1では、2020年度に2019年度に取得したデータを分析し、2020年度の再設計に生かすとともに2020年度にも同じ尺度を用いてデータを収集する予定である。3では、ID理論を援用しながら、多くの大学で現在採用されているMoodleを活用した授業を設計した。2020年度は2019年度に設計・実施した授業設計を検証し、Moodleを活用した授業を再設計し、進化させる予定である。現在、新型コロナウイルス対策のために多くの大学で遠隔授業が行われ、Moodle(LMS)の利用が以前以上に進展していると考えられる。この蓄積は今後授業の効率化を促進すると考えられ、近い将来、MoodleなどのLMSを活用した上で遠隔交流を取り入れることが現実的な授業展開の方法の一つになりうると考えている。2については、当初、自由度が高い遠隔交流を含む授業設計を想定しており、学習成果の確認として、言語活動記録を形態素解析のフリーソフトを利用し頻出語を抽出し、確認テストをする方法などを検討していた。しかし、2は、遠隔交流活動をどう設計するかとも関係する事項であり、2019年度の遠隔交流活動について検証した上で、再度検討したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)教育実験:2020年度は教育実験を実施する計画である。しかし、新型コロナウイルスの世界的流行に伴い、多くの大学が開学の時期を遅らせ、非対面の遠隔授業形式を採用するなど、教育界全体が従来とは異なる状況に直面している。本研究の予定していた実験授業に関しても、非対面形式の導入、実施時期の変更など計画の変更と調整が必要である。従って、当初の研究計画で想定していた、対面授業を前提とした大学教養課程の第二外国語の授業環境を模倣する点で困難が生じると予測される。本研究でも状況に応じた実験授業方法を検討し採用する予定であるが、得られるデータが通常授業時に得られるそれと異なる可能性は否定できない。なお、非対面授業の継続期間も現時点では不透明であり、その点にも留意が必要である。また、実験協力者の募集方法等も計画変更が見込まれ、十分な数の実験協力者を得られないという可能性も存在する。実験授業を行えない場合を想定して、2019年度と同様に、研究代表者が出講する大学の授業でのデータ収集も継続して行う。ただし、上記のように従来と異なる点に留意して研究を進める。2021年度も新型コロナウイルスの状況を注視しながら2020年の研究実施状況、研究成果を踏まえ必要な修正を加え、教育実験を行う予定である。 (2)理論研究:2020年度は、(a)授業設計において、学習到達目標、評価方法、授業内容の一貫性をさらに高めることを目指し、テスト作成方法を中心とした第二外国語習得理論、(b)実験参加者から得られたデータを質的に分析するための質的分析法に関する理論、(c)ID理論の英語文献などを中心に研究活動を進める。2021年度は2020年度末までの理論研究の進捗状況によって理論の研究対象分野を決定する。 (3)研究成果の発表:2020年夏以降から国内外での学会発表を開始する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に予定していた教育実験を実施しなかったため生じた差額である。2020年度と2021年度の教育実験協力者謝金に充当するとともに、ICT利用を進めるための作業補助者への謝金として使用する計画である。
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