研究課題/領域番号 |
19K00835
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
西川 惠 東海大学, 国際教育センター, 准教授 (10453705)
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研究分担者 |
山内 豊 創価大学, 教育学部, 教授 (30306245)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ESP / 航空英語 / 英語教育 |
研究実績の概要 |
2019年度の研究計画目標は、航空機操縦士訓練課程で必要な英語力を特定することであった。目標達成のため、研究協力者とともにデータ収集及び分析を行った。 訓練進捗と習得技術の質のカギとなるフライト後のポストフライトブリーフィング(PFB)に焦点を絞り、PFB中に必要な英語力を特定するため、英語によるPFBをアメリカの訓練所で、日本語によるPFBを日本の訓練所で、それぞれ録画し、文字起こしをして比較した。「母語である日本語でできているが英語ではできていない認知的プロセス」に特に注目し、英語によるやり取りの中で何ができれば、より質の高い技術習得が可能になる可能性があるのかを分析した。 その結果、①操縦時の描写(動作、機械操作、風景等)ができる、②副詞や形容詞を使って操縦動作(速さ、力加減、タイミング等)を説明できる、③飛行中の操縦動作について教官の指摘を理解しできたこととできなかったことを比較・分析することができる、④描写・比較・分析・評価をもとに質問することができる、⑤質問への答えを理解し、知識を組み立てなおし、次回への対策を創造することができる、以上の5点ができると、より質の高い技術習得が実現できるであろうと考えられることがわかった。 よって、例えば、どのような描写や操縦動作の表現が多いのか等を状況別に整理し、それぞれの状況に対応する描写、比較、分析、評価の機能を持つ文法項目や語彙を学習することで、PFB時に飛行中訓練の振り返りや質問がしやすくなると考えられる。飛行技術の質は必ずしも言語力だけで決定するわけではないが、非英語母語話者にとっては、少なくとも言語力による負荷を軽減することはでき、特に英語力の低い訓練生にとっては大きな助けとなると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度はPFBの録画が主な分析資料であったため、なるべく多くのPFBを録画することが必要であった。飛行訓練は天候等の要因で予定通り進まないことも多いため、必要な量の録画資料が収集できるかが進捗のカギを握っていたが、条件にもある程度恵まれ、概ね順調に収集できた。アメリカの訓練所については、訓練マネージャーとも直接打ち合わせを行い、研究計画について理解が得られ、協力について同意書も得られたので、今後は、現地の日本人飛行監督教官に録画機材を託してさらに分析資料の収集を進めることも可能になった。日本の訓練所については、研究協力者により分析資料を録画することができ、こちらも概ね順調に進んだ。 収集データの文字起こしは、英語については学生アルバイトを雇用し、日本語については研究協力者の協力を得て順調に進んだ。 2019年度は概ね順調に進んだため、2020年度をふまえて準備にとりかかることもできた。2020年度は自律学修システムの構築が目標なので、既存のシステムについての調査や情報収集を開始した。紙媒体のテキストから、オンラインシステムまで幅広く調査を進めている。オンラインの英語学習システムは、当然ながら一般目的のための英語が焦点であり、ESPのもの、特に航空機訓練生をターゲットとしたものはない。今後開発が必要となる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画申請時(2018年)における2020年度の研究目標は、①さらなる英語PFB録画資料の収集、②英語PFB録画資料の文字起こしと分析、③②から必要な語彙と文法項目を洗い出すこと、④③の結果を基に学習タスクを考案する、⑤学習タスクを教材としてまとめる、であった。しかし、新型コロナウィルス感染拡大という状況下でアメリカの訓練所での訓練が一時停止となり、再開時期の見通しは2020年4月の段階でたっていない。よって、①および②は訓練再開まで実行はできない。 この状況の中、進められる作業を進めていく。まず、(A)これまでに収集した録画資料の中でまだ分析していないものが残っているため、それらを2019年度と同様に文字起こしし分析する。ただし、これについては、現在、外出自粛や入構禁止となっているため、学生アルバイトの雇用が難しい。規制が順次緩和されるごとに段階的に柔軟に対応していく。2019年度の分析結果から必要な語彙と文法項目は挙がっているのでこれらを基に、(B)訓練生用のテキストから遭遇場面・状況を選び、場面ごとに語彙や文法項目を学習できるタスクを考案する。その際、既存の教材も調査する。(C)学習タスクを系統的にまとめ、教材を完成させる。 以上の計画で、(B)および(C)をメインに、外出自粛規制の状況を見て(A)を、訓練再開の目途がたつ頃に①および②を徐々に再開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
日本語によるPost Flight Briefing (PFB)録画資料は、研究協力者が帯広の訓練地へ行き撮影を行ったが、この旅費については協力者の所属機関の都合により不要、録画機材(ビデオカメラ、三脚、ICレコーダー)については統括者の所属機関で借りることができたため購入費不要、2020年2・3月に予定していたUniversity of North Dakota出張や日本国内の訓練地出張とデータ収集は新型コロナウィルス感染拡大という状況のため実現できず旅費等が不要、のため予定より使用額が少なかった。 2020年度は、新型ウィルス蔓延の状況が続くため、少なくとも前半期は出張やアメリカでのPFBデータ収集が難しい。後半期は冬型天気の影響でデータ収集には適さないので、渡航規制が緩和されてもデータ収集はあまり進まないと思われる。よって、今年度は①2019年度までに収集したデータを処理し、訓練生が遭遇する場面や状況を整理する、②場面を絞った後で、必要な語彙や文法項目を基に描写文やダイアローグ、学習タスクを作成する、③PC等の機器を使用した学修システムを構築する、ことにする。これにより、②に必要な文献や資料購入費、データ分析ソフト購入費、③に必要な機器(VR機器、ソフトウェア、PC、データ貯蔵デバイス、録画機器)購入費に使用予定である。
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