本研究の目的は、小学校外国語教育に関する研究や調査を収集し、そこで用いられている児童の外国語によるコミュニケーション能力の測定方法を考察・整理し、小学校外国語教育に関する教育的政策に参考となるアウトカム指標を提案することである。最終年度である2022年度は、「知識及び技能」に関わるアウトカム指標の分析を論文化し、公表した(信州大学教育学部研究論集第17号「小学校英語教育に関する科学的根拠生成のためのアウトカム指標の検討 ―「知識及び技能」に焦点を当てて―」)。また、小学校学習指導要領で求められている「思考力、判断力、表現力等」に関する資質・能力を整理した。その結果、聞くことや読むことに関しては、コミュニケーションを行う目的・場面・状況等に応じて、理解して得られた情報を精査(吟味、評価、整理、関連付け)することであると整理された。話すことと書くことに関しては、コミュニケーションを行う目的・場面・状況等に応じて、伝える内容を考えたり選んだり、伝える順序や構成を考えたり、伝え方を工夫することであると整理された。2022年度時点で、この資質・能力を測定した先行研究は確認できなかった。 研究期間全体を通して、小学校外国語教育の変遷や小学校学習指導要領等に基づいて、「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」として求められる資質・能力を整理した。また、「学びに向かう力、人間性等」と「知識及び技能」に関して、小学生を対象にした英語教育学や第二言語習得などの研究や調査を収集し、文献調査を行い、どのように測定具が用いられているか分析を行った。その結果、アウトカム指標として用いることができる測定具を整理した。「知識及び技能」の読むことと書くこと及び「思考力、判断力、表現力等」に関しては、アウトカム指標の開発が求められることが分かった。
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